『いなかの神さま仏さま・上』(山と峠の神々)
第1章 山・谷・峠の神と怪物

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▼01-13「山 彦

【序文】140字

山彦も神さまです。山彦はもともと山の神のことで、人が呼ぶと山
の神がそれに答えたものだという。それを木霊(こだま)といいま
した。木霊はいうまでもなく樹木に宿る精霊。これは『古事記』の
神々を生む段に、「…次に、木の神、名は久々能智(くくのち)の
神を生み」とあるのが最初といいます。

山彦

【本文】
山彦も神さまです。もとは山彦とは山の男のことで、「オーイ」と
呼べば「オーイ」と返ってくる、いまならエコーとしてだれでも知
っているヤマビコも、昔は山中に声を発する何物かがいると考えま
した。それは人間の言葉を口まねする『アマノジャク」だとも、ヤ
マノババアだといっていた地方もあります。これとは別に、ヤマビ
コは山の中の何かの霊のしわざではないかとも考えました。そして
それを木霊(こだま)と呼びました。

木霊はいうまでもなく樹木に宿る精霊です。♪こだまが呼ぶよ、ヤ
ッホー……のあれであります。木霊の記録が最初に出てくるのは『古
事記」で、ククノチの神(久久能智神・くくのちのかみ)がそれだ
とされています。また『箋注倭名類聚抄(せんちゅうわみょうるい
じゅしょう)」には樹神の和名『古多万(こだま)」と出ているとか。
また、山彦は山響き、山鳴りなどともいい、山ノ神、山男、天狗の
仕業とも考えられていました。

ちなみに、『古事記』神々を生む段には「……。次に風の神、名は
志那都比古(しなつひこ)の神を生み、次に、木の神、名は久々能
智(くくのち)の神を生み、次に、山の神、名は大山津見(おおや
まつみ)の神を生み、次に、野の神、名は鹿屋野比売(かやのひめ)
の神を生みたまひき。亦の名は野椎(のづち)の神といふ。(志那
都比古の神より野椎まで、?せて四はしらの神ぞ)」と載っていま
す。久久(くく)は茎(くき)のことで、智は男性をあらわす接尾
語だそうです。これは次に生まれる大山津見神や・野槌神の伏線と
してあらわれた神なのだそうです。ここに出てくる野槌神はあの「ツ
チノコ」のことだそうです。

▼【参考文献】
・『神々の系図』川口謙二(東京美術)1981年(昭和56)
・『古事記』:新潮日本古典集成・27『古事記』校注・西宮一民(新
潮社版)2005年(平成17)
・『世界大百科事典11』(平凡社)1972年(昭和47)
・『世界大百科事典30』(平凡社)1972年(昭和47)
・『日本大百科全書23』(小学館)1989年(平成1)

 

 

 

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