山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼870号 「高山植物・ひょうきんなおちょぼ口タカネマンテマ」

▼870号 「高山植物・ひょうきんなおちょぼ口タカネマンテマ」

【本文】
タカネマンテマという高山植物があります。長い茎の先に白い俵のような
形の花。縦に緑がかったすじがはいっていて斜め下を向き、たくさんの花
があちこち向いている様はまるでひょうきん者が集まっているようです。

日本では南アルプスの砂礫地(とくに北岳あたりにある)にだけにある植
物で絶滅危惧種になっているそうです。

この植物は、全体に細い毛が生えていて、高さ10〜20センチ。茎は白
い短い毛がびっしりと生え、全体が緑白色に見えるほど。葉は茎の下の
部分についていて、長さ10センチ前後のへら形。

7,8月ごろ、群れて出た茎の先に1個ずつ花を斜め下向きに咲かせま
す。がく筒は1.5センチくらいで緑がかった暗紫色の10本のすじが目立
っています。すじの上にも細かい毛が生えています。

俵のような花は、5片の花弁ががく片から三角形に少し出ていてピンク
で、まるでおちょぼ口の唇のようです。花の時には下の方を向いています
が、次第に真っ直ぐになるそうです。

雄しべ10個。花柱は5個。がく片は花が終わるとにさらに卵形にふくらむ
そうです。タカネマンテマのタカネ(高嶺)は分かりますがマンテマとは?

牧野富太郎植物博士は『牧野新日本植物図鑑』のなかで「マンテマは海
外から渡ってきた来た当時の呼び名のマンテマンの略されたもので、こ
のマンテマンとは、多分にAgrostemma(ムギセンノウ属)という屬名の転
化したものではないかと想像する」と述べています。

つまり「アグロステンマ」がいつの間にか「マンテマ」になったのではという
わけです。この植物はナデシコ科マンテマ属だという。

かつてこのマンテマ属は、マンテマ属とフシグロ属に分けられていたそう
ですが、1957年(昭和32)、両属を合わせて1属(約400種)とするのが
定説となったそうです(『植物の世界7巻・80号』)。
・ナデシコ科マンテマ属の岩石地に生える多年草。

▼【参考文献】
・「高山植物」(山と渓谷)1985年(昭和60)
・『植物の世界7巻・80号』(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1995年(平成
7)
・『世界の植物巻7・76号』(朝日新聞社)1977年(昭和52)
・『日本大百科全書・14』(小学館)1987年(昭和62)
・『日本の野草』(山と渓谷社)1983年(昭和58)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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