山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼860号 「高山植物・ヨツバシオガマ」

【本文】
高山植物にヨツバシオガマという花があります。葉が4枚ずつ節ごとに輪になってつ
いているのと、紅紫色でくちばしのようにとがった花が印象的です。

ヨツバは四つ葉。シオガマは塩竃。この植物は菊に似た葉が細かく裂け、なんとなく
いい感じがします。そんなことから、花ばかりでなく「葉までよい」感じです。

ところで「葉までよい」は「浜でよい」に通じます。「浜でよい眺め」とくれば海岸の風景
におもむきを添えるものに宮城県の「塩竃」があります。そこでつけた名前がシオガマ
ギク。ヨツバシオガマはその仲間なのだそうです。

ヨツバシオガマは高い山の草地などに生える多年草。高さ20〜60p。葉は4枚ずつ
節ごとに輪のように(輪生)しています。根のきわに生えている葉は、長い柄を持ち、
茎の節に生える葉は柄が短く、羽状に深く裂けて先がとがっています。

夏、茎のてっぺんに花の穂をつけて、数段の層に4つずつ輪生した花(紅紫色です
が変異があるという)をつけます。花びらの上は先端が細長いくちばしのようにとがっ
ています。本州中部、北部、北海道に分布。

同じように葉が4枚ずつつけた仲間のタカネシオガマがあります。これは高い山の岩
地に見られる1年草。高さ5〜15p。葉は同じ4枚でも背が低くがっちりしていて、先
がとがりません。

花は濃い紅紫色。茎の先の短い果穂に、数層の4個ずつ輪生した花を蜜に横向き
につけますが群がっているように見えます。そして花冠の上唇がくちばし状になりま
せん。本州中部、北海道に分布。

さらに同じ仲間にミヤマシオガマがあります。半寄生の多年草で、高山の岩の多い草
地に生え、高さ5〜15p。花茎の頂に密な果穂をつくり10〜20個の紅紫色の花を群
がって咲かせます。

花はくちばしに似ていますが、のび加減の舟形になっています。葉っぱは根っこのき
わに群がって生え、長い柄があり、羽状に裂けた葉は細長い。
・いずれもゴマノハグサ科シオガマギク属。

▼【参考文献】
・『高山植物』(野外ハンドブック・8)小野幹雄ほか(山と渓谷社)1985年(昭和60)
・『世界の植物巻1・10号』(朝日新聞社)1976年(昭和51)
・『日本大百科全書・23』(小学館)1989年(平成1)
・『日本の野草』(山と渓谷社)1983年(昭和58)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1961年(昭和36)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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