山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼856号 「高山植物・岩の割れ目に咲くイワギキョウ」

【本文】

イワギキョウという高山植物があります。高い山の岩壁の割れ目や
岩礫地に、明るいコバルトブルーの花を咲かせています。夏山で汗
を吹き出しながら登ってきた登山者はこの花を見ながら一呼吸しま
す。

イワギキョウはキキョウ科ホタルブクロ属の多年草。夏に根生葉の
ロゼットの少し下から高さ5〜12センチの花茎を出し、その先に
鮮やかな紫色で、直径2.5センチくらいの花をふつう1個、ときに
は上葉の葉腋から2〜3個咲せています。

イワギキョウに似たものにチシマギキョウがあります。イワギキョ
ウとチシマギキョウは、よく似た場所に生える高山植物です。でも、
両方が一緒に生えていることはほとんどないといいます。イワギキ
ョウとチシマギキョウは、なにがしかのすみ分けをしているようだ
と専門家は見ています。

イワギキョウは花が斜め上向きで、カップ状、先の広い鐘形をして
います。それに対してチシマギキョウは、紫がかって横向きに咲か
せます。花冠(花びらの総称)の基部にある萼は5つに裂けて糸の
ように細くなっています。

ところで、日本で高山植物が広く知られるようになったのは明治時
代の半ばになってからだそうです。しかし、イワギキョウは、1874
年(明治7)の『日本植物図説』(伊藤圭介)という本にすでに図
が掲載されていたといいますから、随分早くから知られていたわけ
です。

イワギキョウは漢字で岩桔梗。高山の岩場に生え、花がキキョウに
似ているためだそうです。イワギキョウやチシマギキョウもそうで
すが、ホタルブクロ属の植物は、ロックガーデンや花壇に植裁され、
鉢植えや切り花にもされるそうです。
・キキョウ科ホタルブクロ属の多年草。

▼【参考文献】
・「高山植物」(野外ハンドブック・8)小野幹雄ほか(山と渓谷社)
1985年(昭和60)
・『世界の植物巻1・7号』(朝日新聞社)1975年(昭和50)
・『日本大百科全書・2』(小学館)1985年(昭和60)
・『日本の野草』(山と渓谷社)1983年(昭和58)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1961年(昭和36)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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