山の伝承伝説に遊ぶ
山旅通信
【ひとり画ってん】とよだ 時

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▼851号 「花弁に見えるがく片・ハクサンイチゲ」

【本文】

まだ雪が残る高山のお花畑。白い花々が散らばるハクサンイチゲの
群落は谷を隔ててそびえる残雪の山々をバックにひときわ生えてい
ます。

ハクサンイチゲは中部地方の高茎草原に咲く高山植物。ハクサンイ
チゲは「白山一華」で、北陸の白山で見つけたものに名前をつけた
という。

ハクサンイチゲは7月〜8月、高さ20センチから40センチの花
茎を出し、そこに1〜5個の花をつけます。1個は頂きにつき、
ほかのものは茎葉のわきから出て散形状につきます。

白い花びらのようなものは実はがく片で、普通5枚から6,7枚
あることもあるという。本当の花はというと白いがく片のうち側
にあるもの。

全体に白く長く軟らかい毛が密生。花弁はなく、黄色いたくさん
あるのは雄しべだそうです。雌しべも多数。

花がおわると花柄が伸びはじめ、30センチにもなるときがあり、
柄の先に緑色、あるいは暗色で、扁平な楕円形のそう果ができる
という。

ハクサンイチゲは、株が太くて下にひげ根を出し、周囲に古い繊
維が残っています。と図鑑にありますが、採取は禁止されており
根っこを掘って見たわけではありません。

根生葉(地面から直接葉が出ていて根から生えているように見え
る)はむらがり生えて、短い小葉柄のある3つの裂片に分裂して
います。

さらに側裂片は深く2つに裂けています。茎から生える葉は、4
枚あり、2枚ずつ対になり十字になっていますが、節と節の間が
縮まっているので4枚が輪生(茎のまわりに集まってつく)して
いるように見えます。

ハクサンイチゲは、環境によって高さや草の形がかなり変わって
いるといいます。

もともと北半球の冷温帯と高山に広い分布を持つ植物だそうで、山
地ごとに変異があり、日本産のものもひとつの変種として扱われる
ことが多いという。

本州中部地方以北、北海道に分布。また北海道、カラフト、南千
島にはエゾノハクサンイチゲ、さらに四国の石鎚山には「シコク
イチゲ」があります。

ハクサンイチゲはキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、林な
どに生えているイチリンソウやニリンソウの仲間です。

霧疾(はや)しはくさんいちげひた靡(なび)き(水原秋櫻子)
はくさんいちげにとどきては消ゆ雲の影(高田貴霜)

▼【参考文献】
・「高山植物」(野外ハンドブック・8)小野幹雄ほか(山と渓谷社)
1985年(昭和60)
・『植物の世界8巻・93号』(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1996年
(平成8)
・『世界の植物6・68』(朝日新聞社)1977年(昭和52)
・『日本大百科全書・18』(小学館)1988年(昭和63)
・『日本の野草』(山渓カラー名鑑)(山と渓谷社)1983年(昭和58)
・『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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