とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼834号 「葉っぱが耳のウサギギク」

【概略】
ウサギギクのひときわあざやかな黄色い花。一対の長い葉が、ウサ
ギの耳に似ているからという。別名のキングルマは花が車の形にな
っているところから、「金車」といった。花は外側に一列の雌性の
舌状花、内側に両性の筒状花が中心に集まる。
・キク科ウサギギク属の多年草

▼834号 「葉っぱが耳のウサギギク」

【本文】
夏山の湿った草地、高山植物の花のなかにひときわ目立つあざやか
な黄色いウサギギクが咲いています。雪がとけるとともにのびはじ
める一対の長い葉が、ウサギの耳に見えるというのでついた名前だ
そうです。

この花は立山(3015m・富山県)や白山(2702m・岐阜県と石川
県の境)のものが早くから知られていたという。日本で最初のリン
ネの分類法に 従って書き上げた近代科学的植物図鑑『草木図説』
飯沼慾斎著(1862・文久2年)(草部20巻は1856年・安政3)に
はウサギギク、別名キングルマとあるそうです。黄色い花が車の形
になっているところから、「金車」といったらしい。

この植物はキク科ウサギギク属の多年草で、地下茎をひいてふえる
のだという。茎は20〜30pで直立。根元から生える葉や花茎の下
の葉は対になって生え、6〜12pのサジ形をしています。

ウサギギクは夏、7〜8月、葉の頂に4〜5pの頭花を咲かせます。
花は外側に一列の雌性の舌状花があり、内側に両性の筒状花があり
中心に集まっています。

おしべは暗紫色、めしべの枝は鈍頭で多少毛が生えています。満開
になると美しいので鉢植えにして観賞もされます。本州中部以北、
北海道に分布しています。

母種は、東北地方の高山から北海道に分布するエゾウサギギク。内
側に固まっている筒状花の花冠がないのがウサギギクと違うところ
だそうです。

ウサギギクにはこんな民話があります。ある時神さまが汚い姿を
して森の動物たちの心を試しにやってきました。リスは倉庫から
クルミやクリを差し出しました。

そして猿は木の洞(うろ)から猿酒を、カワウソは川の魚を、キ
ツネは鶏小屋から黙って戴いた卵を出しました。しかしウサギは
なにもあげるものがありません。

そこでウサギは自分の体をご馳走にして下さいと火の中に飛び込
みました。神さまはウサギを抱き上げ月の世界へ連れて行きまし
た。

そしてごほうびにその子孫たちにも早く走れる足と、ウサギギク
の葉のような長くてよく聞こえる耳をくれたということです。

蛇足ですが、本州や四国の深山の湿地に生えるチョウジギクという
植物があります。これは舌状花がなく、すべて両性の筒状花で花の
感じもウサギギクとかなり違って見えますが両方とも同じ属だそう
です。

明治のはじめ、フランスの医師サバチエが、長野県でとった標本を
もとに発表したそうですが、このときはウサギギク屬とは別屬とさ
れていたという。植物の分類も変わるのですね。

ちなみにその名は、頭花の形が香料に使う丁子(ちょうじ・フトモ
モ科フトモモ屬のチョウジノキ)のつぼみに似ているからなのだそ
うです。
・キク科ウサギギク属の多年草

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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