とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼830号「西丹沢・鉄砲木ノ頭」

【前文】
西丹沢菰釣山から三国山への尾根にある鉄砲木ノ頭。山頂からは山
中湖と富士山の展望が抜群。石祠のある山頂には別名の明神山の標
注しかない。明神山は、祠の山中明神からきた山梨県側の呼び方。
・山梨県山中湖村と神奈川県山北町との境

▼830号「西丹沢・鉄砲木ノ頭」

【本文】
普通西丹沢縦走するとき、畦ヶ丸、菰釣山から南下、高指山を経て
富士山を見ながら山中湖畔平野へ降りてしまいます。しかし、もう
一歩、せっかくの雄大な展望のつづきを歩くのも一興です。切通峠
から登りきると鉄砲木ノ頭です。

木一本生えていない坊主頭のような山頂に山中諏訪神社奥宮の石祠
が建っています。ここのピークは、たび重なる富士山の噴火による
火山灰の堆積と浸食によって生まれたのだそうです。

目の前に広がった山中湖とすそ野を広げた富士山の景色にお弁当を
広げる人も多い。最近はハングライダー愛好者が多いとか。

大分前、丹沢の本を出版するにあたり、東丹沢仏果山から大山、塔
ノ岳、蛭ヶ岳、檜洞丸経由で1週間をかけ、ほぼ全山縦走をしたこ
とがありました。

あと2日で達成できるという日に、ここ鉄砲木ノ頭にさしかかりま
した。1月ということで最初から最後まで雪の中。鉄砲木ノ頭は風
をよける場所もなく、雪さえ吹き飛ばされて、ただ凍てついた地面
に氷が張りついた祠だけがありました。

吹き飛ばされそうな風に祠に彫ってある文字など観察もままなら
ず、三国山方面へと避難しました。その後何度もこの山を通り訪れ
ているのですが、あの凍りついた石の祠と地面の色が一番印象に残
っています。

ところで、この山頂の標注には「明神山」の文字だけがあり、鉄砲
木ノ頭の文字はひとつもありません。もしかして別の山に来てしま
ったかなと勘違いするほど。明神山とは山梨県山中湖方面の人たち
の呼び方で、別名になっています。

山頂の石祠の山中諏訪神社は別名「山中明神」で、ここからつけら
れた山名。里宮は山中湖の西岸山中集落にあり、創建は966年(康
保3)といわれる古社とあります。ホントカイナ。

それからグーンと下って天文21年(1552)に武田信玄が戦勝を祈
願して1間社流造りの本殿を再建したと伝えられています。

ところで神奈川県側で呼ぶ「鉄砲木ノ頭」の名前については、この
あたりは良材がとれたこともあり、伐採された木材を運ぶために、
沢のせきを利用して一度に木材を下流に流した「鉄砲水」からきた
のではないかといわれていますがはっきりしていないようです。

蛇足ながら鉄砲木ノ頭の北にある切通峠。ある年の7月、そこから
東に下った沢の源頭(林道の先端)で野宿をしたことがありました。
日帰りの山行で、もしなにかのトラブルで下山できないときの訓練
です。

梅雨時ということもあって夕方雨が降り出しました。しばらくして
一瞬晴れ間が出ました。同行の人たちがなにか騒いでいます。ホタ
ルです。ホタルが乱舞しているのです。

思い思いの方角に飛ぶホタル。それぞれに弧を描きながら点滅する
光は、まるで夢の中のよう。誰もがただただあっけにとられて見て
いるだけでした。運がよかったのでしょうか。あの林道の先端はい
まどうなっているのでしょうか。

★【データ】
山名:鉄砲木ノ頭(てっぽうぎのあたま・かしら)

・【異名・由来】
異名:山梨県側では明神山
由来:沢のせきを利用して一度に木材を下流に流す鉄砲水?のこと
か。

・【所在地】
山梨県南都留郡山中湖村、神奈川県足柄上郡山北町との境。富士急
行富士吉田駅からバス終点平野停留所下車、さらに歩いて1時間30
分で鉄砲木ノ頭。三等三角点(1291.0m)と山中諏訪神社奥宮の祠
がある。地形図に三角点の標高の記載あり。付近に何も記載なし。

・【ご利益】
縁結・子授・子宝・安産・子育

・【基準点閲覧】国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」で検索
【三角点】緯度経度:北緯35度24分40.31秒、東経138度55分4.5


・【点の記】国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」から検索
基準点(三角点):(基準点コード:TR35338078301)(点名:中野
村(二))(冠字選点番号:沢 87)(種別等級:三等三角点)(基
準点成果状態:正常)(地形図:甲府−山中湖)(測地系:世界測地
系)(緯度経度:緯度 35°24′40.2567 経度 138°55′04.568)
(標高:1291.00m)(基準点現況状態:正常 20040120)(所在地:
山梨県南都留郡山中湖村大字平野字吉政608)(点の記図閲覧:可)

・【地図】
2万5千分の1地形図「駿河小山(甲府)」&御正体山(甲府)(2図
葉名と重なる)。5万分の1地形図「甲府−山中湖」

・【山行】
・(第6日):1991年(平成3)1月18日(金・快晴)探訪:★きょ
うの行程「菰釣避難小屋・菰釣山・大棚ノ頭・山伏峠高原ホテルで
飯塚氏と落ち合う・高指山・切通峠・鉄砲木ノ頭・三国山・明神峠
(テント泊)」:★今回の山行【1991年(平成3)1月13日(日)〜1
9日(土)「新宿駅・本厚木駅・半原バス停・仏果山・煤ヶ谷・物見
峠・三峰山・不動尻・大山・ヤビツ峠・塔ノ岳・丹沢山・蛭ヶ岳・
檜洞丸・大室山・加入道山・菰釣山・高指山・三国山・明神峠・不
老山・山市場バス停・新松田駅・新宿駅」】:「丹沢ほぼ全山縦走」
単独行(初日と最終日は飯塚氏が同行)(ふみあと・6)


・【参考文献】
「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
「イラスト丹沢・山ものがたり」とよた 時(山と渓谷社)1991年
(平成3)
「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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