とよだ 時・山旅漫歩゚民俗画
山の伝承【ひとり画通信】

▼818号 「野山のはずみ玉・ジャノヒゲの実」

【前文】
ジャノヒゲの丸い実は、野山のはずみ玉。果実の皮が薄く成長途中
で破れて種子が裸のまま熟す。コバルトブルーの実は果実ではなく
種子の色だという。まわりの皮をはぐと出てくる白い実はよくはず
む。ところで「蛇の鬚!」ヘビにひげがあったっけ?
・ユリ科ジャノヒゲ属の多年草

▼818号 「野山のはずみ玉・ジャノヒゲの実」

【本文】
日のよく当たる草地や林のへりに直系8ミリくらいの、コバルトブ
ルーの丸い実が光っています。ジャノヒゲという草の実です。この
実は地面にぶつけるとよくはずむので、昔のいなかの子供ははずみ
玉といって遊んだものです。

ところで草の名のジャノヒゲは、漢字で書くと「蛇(じゃ)の髭(ひ
げ)」です。細くて長い葉が、ヘビのひげに似ているというわけで
す。エッ!ヘビのひげ?。

ヘビにひげがあったっけ?と、そんなことを考える人のために、リ
ュウノヒゲという異名をちゃんと用意してあります。

この草の細長い葉っぱは、先の曲がり具合といい、見ているとヘビ
にヒゲがあったらこんな形だろうと見えてくるから不思議です。ジ
ャノヒゲは日当たりのよい草地や林のへりに生えるユリ科の多年
草。葉は濃い緑色で長さ10〜20センチ。幅3、4ミリ。

7、8月ごろ、葉の間から7〜10センチの花茎を出して、淡い紫色
の小さな花が、総状花序というから、柄のある花が軸からはなれて、
たがいちがいについて房になって下向きに咲きます。花弁は6枚で
雄しべは6本、雌しべは1本。

ところで「ユリ科の花は子房上位」という常識があるそうです。子
房上位とは子房(雌しべの下端の膨らんだ部分)の位置が、花弁や
雄しべの基の部分より上にあるもの、下にあるものは子房下位なの
だそうです。

ところがジャノヒゲはユリ科なのに子房、雄しべや、花弁やがく片
など花被片の下部が互いに合着して、子房半下位になっているとい
うのです。

また、種子の成熟過程も変わっていて、刮ハ(さくか・乾くと裂け
る果実)は果皮が薄いために成長途中で破れてしまい、その後種子
は裸になったまま成熟します。

あのきれいなコバルトブルーは、果実ではなく種子の色だったので
す。果実でないため固く、まわりの皮をはぐと出てくる白い実は、
固いものにぶつけるとはずみます。

さて根っこ。これこそ名前の通りひげ根です。そのふくらんだ部分
(塊根)を採って乾燥したものを麦門冬(ばくもんとう)と呼んで薬
用にするそうです。サポニン、粘液、ブドウ糖などを含んでいて甘
く粘りがあるそうです。

薬効は解熱、鎮咳(ちんがい)、去痰(きょたん)、強壮剤として百日
ぜき、肺炎、肺結核、咳嗽(がいそう)、口渇、便秘その他モロモロ
に利用します。日本特産品。

春の雪のこる山かげじやのひげの碧き実もぐはこころいたかり 結
城哀草果(ゆうきあいそうか)。

結城哀草果は大正から昭和の歌人。山形県生まれ。農業に従事しな
がら東北農民の哀歌を詠じ、地方文化の発展に寄与したひとだそう
です。
・ユリ科ジャノヒゲ属の多年草

・【参考文献】
「原色日本薬用植物事典」伊沢凡人(誠文堂新光社)1980年(昭
和55)
「植物の世界・112号」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1996年(平
成8)
「植物の世界・142号」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1997年(平
成9)
「世界の植物・101巻」全120巻(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1977
年(昭和52)
「日本大百科全書・11」(小学館)1986年(昭和61)
「日本大百科全書・23」(小学館)1989年(平成1)
「日本薬用植物事典」伊沢凡人(誠文堂新光社)1980年(昭和55)
「野山の薬草」山西潔(図鑑の北隆館)1974年(昭和49)
「花ごよみ」松田修(社会思想社)1970年(昭和45)
「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
「薬草のすべて」長塩容伸(ひかりのくに株式会社)1978年(昭
和53)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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