山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼817号 「石仏紀行・羅漢さんと名月」

【前文】
埼玉県川越市喜多院の羅漢さんもみな表情豊かです。瞑想にふける
もの、大笑いするもの。そのなかに耳打ちしながら談笑する姿を見
つけました。きょうは中秋の名月です。木々の枝の間から時々顔を
出す満月。名月はやはり、この月の月だわな…。耳を澄ますとそん
な石像の声が聞こえました。

▼817号 「石仏紀行・羅漢さんと名月」

【本文】
「月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月」という歌があ
ります。この歌は、月が8回出ているために陰暦8月の十五夜(中
秋の名月)を意味するのだという。

もともとは宮中の女官たちが中秋の名月をめでて歌ったものだそう
ですが作者は不詳だといいます。

埼玉県川越市の喜多院は天台宗星野山無量寿寺喜多院と称し、平安
時代前期に慈覚大師(円仁)が草創。境内にならぶ有名な五百羅漢
は寺宝にもなっています。

羅漢さんとは阿羅漢さんの略で、悟りを開き功徳が備わった仏教修
行者のことだそうです。羅漢さんには十六羅漢と五百羅漢があるそ
うです。

五百羅漢はお釈迦さまのもとで修行した500人の聖者で、お釈迦さ
まが入滅後は、仏教のお教えをまとめることを使命として、それぞ
れの道に進んだとされています。

この500人の羅漢さんのそれぞれの名前などははっきりしないとい
う。ここ喜多院の羅漢さんたちも、ひとり瞑想にふけるもの、大笑
いするもの、怒るもの、寝そべるもの、頭をかくもの、どれを見て
も表情豊かです。

そのなかになにやら耳打ちしながら談笑する姿の石像を見つけまし
た。きょうは中秋の名月。満月が照らす明かりは真昼のようです。

あちこちから聞こえる虫の鳴き声を耳にしながら、木々の枝の間か
ら時々顔を出す名月を見上げます。名月はやはり、この月の月だわ
な…。耳を澄ますとそんな石像の声が聞こえてきました。

▼【データ】
埼玉県川越市小仙波町 東武東上線川越駅から徒歩20分で喜多院

【参考文献】
「秩父の石仏」テレビ埼玉編集(文一総合出版)1980年(昭和55)
「日本石仏事典」庚申懇話会(雄山閣)1979年(昭和54)
「日本大百科全書・6」(小学館)1985年(昭和60)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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