とよだ 時・山旅漫歩゚民俗画
山の伝承【ひとり画通信】

▼808号 「高山植物・ミヤマリンドウ」

【前文】
リンドウは漢字で竜胆。中国名からきている名前で、「熊胆」に負
けないほど苦いことからつけられたという。漢方でも生薬名を竜胆
といい、根茎や根を消炎や解毒薬の竜胆瀉肝湯などに応用される。
こんな薬草だから各地に伝説が残っている。
・リンドウ科リンドウ属の多年草。

▼808号 「高山植物・ミヤマリンドウ」

【本文】
リンドウは竜胆と書きます。これは中国名からきている名前で、苦
い薬として名高い「熊胆」に負けないほど苦いことからつけられた
名だといいます。

漢方でも生薬名を竜胆といい、根茎や根を消炎や解毒薬の竜胆瀉肝
湯(りゅうたんしゃかんとう)などに応用されるそうです。こんな
薬草ですから各地に伝説が残っています。

その昔、役ノ行者として知られる小角(おづぬ)が日光の山を歩い
ているとウサギが雪の中からなにか草を掘ってはなめていたとい
う。

役小角は不思議に思い聞くと、ウサギは「自分の主人が病気になっ
ているので薬草を探している」と答えながら、草の根をくわえて雪
の原に消え去ったという。

役小角はウサギの持っていった草を見つけると、広く村人たちに教
えたという。この薬草は病気に良く効いたという。ウサギは二荒神
の化身に違いないと日光では久しい間、リンドウは霊草として扱わ
れました(「二荒縁起」)。

また、東北の吾妻山にも薬草としての伝説があります。昔、この山
麓にムラサキという娘が住んでいました。ムラサキは病気の父親の
ためにあちこち薬草を探して歩いていました。

そんなある日、吾妻山に竜の胆があるといううわさを聞きました。
娘は早速出かけていきました。ヤブの山をどれだけ歩いたでしょう
か、茨の中を抜けたとたん突然開けた広場に飛び出ました。そこは
一面の高山に咲くリンドウの花園でした。

「リンドウは竜の胆だという」。ムラサキは父親のために夢中でリ
ンドウの根を掘りはじめました。するといままで晴天だった空が一
転にわかにかき曇り、地鳴りとともにものすごい形相の竜が炎を吐
きながらあらわれました。

「だれだ、すみかを荒らす奴はッ」。と、猛然と襲いかかってきま
したが、ムラサキは竜胆を摘んだ手かごを離しません。「わしの胆
を返さなければ、頭から飲み込んでやるッ」。

ムラサキは手かごを抱えたまま、竜に飲み込まれてしまいました。
ところが自分の命の糧である胆を飲み込んでしまった竜はたちま
ち、苦しみはじめました。

しばらくのたうち回った竜は、息も絶え絶えにいいました。「胆を
返してくれ!おまえの望みをかなえてやる」。それを聞いたムラサ
キは手かごを離しました。

こうして妙薬を竜に貰ったムラサキは急いで家に帰り父親に飲ませ
ました。父親はみるみる元気になり、二人は幸せに暮らしたという
ことです。

ちなみにリンドウは健胃、寝汗、はれ物、血の道、冷え性などにも
よいそうです。竜胆や朝はきらめく白馬岳(水原秋桜子)。竜胆や
朝襞(ひだ)消ゆる槍穂高(中島斌雄)
・リンドウ科リンドウ属の高山の湿り気のあるところに生える多年草。

・【参考文献】
「原色版日本薬用植物事典」伊沢凡人(誠文堂新光社)1980年(昭
和55)
「高山植物」(野外ハンドブック・8)小野幹雄ほか(山と渓谷社)1985
年(昭和60)
「植物と伝説」松田修(明文堂)1935年(昭和10)
「植物の世界・3号」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1994年(平成
6)
「世界の植物」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1976年(昭和51)
「続・植物と神話」近藤米吉編著(雪華社)1976年(昭和51)
「カラー図説 日本大歳時記・秋」水原秋桜子ほか(講談社)1989
年(昭和64・平成1)
「野山の薬草 その薬用メモ」山西潔(図鑑の北隆館)1974年(昭
和49)
「花の伝説・高山植物」文・稲田由衣、絵・戸谷恵子(株式会社ナ
カザワ)発行日不明
「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
「薬草のすべて」長塩容伸(ひかりのくに株式会社)1978年(昭
和53)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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