とよだ 時・山旅漫歩゚民俗画
山の伝承【ひとり画通信】

▼806号 「高山植物・ミズバショウの伝説」

【前文】
あの炭焼きの煙の下に彦次がいる。おゆきは恋しい人を追って雪の
中、煙を追って腰まで埋まる新雪の中をはいずり回った。冬の終わ
りに彦次は雪の中でおゆきの頭巾を見つけた。春になり雪解けの中
に花頭巾をかぶった不思議な白い花が咲き出した。まるで中の花を
かばっているように。
・サトイモ科ミズバショウ属の多年草

▼806号 「高山植物・ミズバショウの伝説」

【本文】
山奥の茂木(もぎ)の里におゆきというかわいい娘が住んでいまし
た。いつのころからかおゆきは炭焼きの彦次と恋仲になっていたと
いう。彦次の炭焼きがまは奥山の雪の中。

「立ちのぼる煙の下にはあの人がいる」。おゆきは村人の目を盗ん
では夜中にそっと出かけ、一番鶏の鳴き声とともに帰ってくるので
した。ふっくらしていたおゆきはみるみるやせていきました。

むらの若者たちは不思議に思いました。きっと何かわけがあるに違
いない。若者たちは交替で見張ります。おゆきはいつものとおり身
支度を整えそっと家を出ました。あとをつける若者…。

「よそ者におゆきをとられた」。くやしがった若者たちは「このま
ま放っちゃおけねえ」。冬になったその晩もおゆきは家を出ていき
ました。

山に登りつめ雪明かりを透かして見るとあの尾根、この谷、こっち
の山麓から幾筋もの煙が立ちのぼっています。カンジキを履いても
腰まで埋まる新雪の中であがらない足を無理に動かします。

とりあえずあの尾根まで。行ってみると炭焼きがまに似せた燃え残
りの湿っ木ががくすぶっているばかり。どの谷に行っても同じこと。
夜の雪山、おゆきの体は次第に冷えていきます。

冬も終わるころ、炭に焼く木材を求めて歩く彦次は雪の中におゆき
の頭巾を見つけました。

その時から彦次の姿は消えたという。春になり、茂木の里の奥山に
花頭巾をかぶった不思議な花が咲き出しました。まるで中にある花
をかばっているような白い頭巾。

うわさを聞いた若者たちは驚きおそれて決して近づかなかったとい
うことです(「花の伝説」稲田由衣・ナカザワ)。

ミズバショウは水芭蕉。湿原に好んで咲いて、花が咲いた後に伸び
る葉の形が、バショウの葉に似ていることからその名がついたもの
だという。

バショウは主に暖かい地方で栽培され、2mくらいの楕円形の葉を
伸ばし、なぜか横の方向に裂けやすい性質をもっているそうです。

ミズバショウはサトイモ科というだけあって、地下に太い肉質の根
茎をもっており、茎は生長しただけ地下に引きずり込まれるため、
芽はいつも地面直下にあるという不思議な植物です。

春、葉がそろそろ展開を始めるころ、同時に葉腕から花茎が出て、
緑色の肉穂をつけます。花茎と花序は真っ白な仏縁苞に包まれてい
ます。

水の中で群生する姿は美しく、尾瀬の“夏の思い出”にも歌われて
います。花の時期は5〜7月。兵庫県以北の本州から北海道に分布
しています。

別名カンノンハス。・方言:ベコノシタという方言もあります。花
言葉は「変わらぬ美しさ」。
サトイモ科ミズバショウ属の多年草

・【参考文献】
「自然は友だち・95」とよた 時:「子供の科学」(誠文堂新光社)1992
年(平成4)6月号所収
「世界の植物・8」(朝日新聞社)1975年(昭和50)
「花の伝説・高山植物」文・稲田由衣、絵・戸谷恵子(株式会社ナ
カザワ)発行日不明
「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
「植物の世界・11」(朝日新聞社)1996年(平成8)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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