とよた 時・山のゆ-もぁ-と(イラスト)
山旅漫歩゚
【ひとり画通信】

▼798号「北ア剱岳・岩場にしがみつく蟹の列」

【概略】
剱岳は古来登ってはいけない神聖な山。こんな山も時代にはかなわ
ず大正9年竹内イサが、翌年小倉貞という女性が登っているという。
しかし現代では難所「カニのタテバイ」、「カニのヨコバイ」もツア
ーに参加した大勢の女性が列になって岩場にしがみついています。
・富山県上市町と立山町との境

▼798号「北ア剱岳・岩場にしがみつく蟹の列」

【本文】
北アルプス立山の北にそびえる剱岳(2999m)は、古くから山その
ものが不動明王とあがめられ、登頂不能の山とされ、弘法大師がワ
ラジ千足費やしても登れなかったという伝説もある神聖な山。立山
曼陀羅では最奥にある白い針の山として描かれているほどです。

「万葉集」巻十七などから剱岳を含んだ立山連峰の総称として多知
夜麻(たちやま)と歌われています。

ツルギの名があらわれる最古の文献は天正13年(1585)、羽柴秀吉
が佐々成政を討つため越中にきたとき、京都に宛てた「東は立山う
は堂・つるぎの山麓迄」焼いて打ち従えたとする書状だろうといわ
れています。

江戸時代の中期初頭の1712(正徳2)年に大阪の医師・寺島良安が
著わした「和漢三才図会」には、立山開山伝説のなかで「劒山の刀
尾天神」との記述があり、剱岳の神は刀尾(たちお)天神とありま
す。

信州地方の伝承に長野県戸隠山の戸隠明神の正体は九頭竜で、その
尾っぽは越中剱岳を7巻半巻いているという説もあります。

山頂の祠は1956年(昭和31)の創建で祭神は須佐之男命神。こんな山
ですから神秘に包まれ、いろいろな伝説が残っています。

そのひとつに「森尻(もりしり・立山山中)に智明坊というものが
いた。生まれつき?慢(きょうまん)で、にわかに牛の吼(ほ)え
るような声を出し、遂に天狗と化し、自ら光蔵坊と名のって市の谷
に棲(す)んでいた。剱岳の刀尾権現はこれを逐いだしたが、退去
する時一つの爪をおとしていったという(「和漢三才図会」巻第六
十八)。こんなところに天狗の爪があるとは。一度拝見したいもの
です。

ところで「人間登る能わず、人間登るべからず」のこんな神聖不可
踏の山でも時代にはかなわず、大正9(1920)年、竹内イサが夫と
ともに長治郎谷・剱岳・小窓、馬場島(ばんばじま・いまの富山県
中新川郡上市町)のコースを踏破。

また翌年、大正10年(1921)には小倉貞という女性が塚本繁松とと
もに小黒部谷(こくろべだに)を遡行して剱岳に登頂しているそう
です。

この山の有名な難所に「カニのタテバイ」、「カニのヨコバイ」があ
ります。両方ともに鎖や鉄の棒、針金などにつかまって通過すると
ころ。

タテバイは登り専用、ヨコバイは下り専用になっていますが、毎年
何人かは滑落すると聞いています。こんなところにもツアー客がや
ってきて、大勢の女性が岩場に列になってしがみついています。

ワラジ千足使っても登れなかった弘法大師も目を丸くして見ている
ことでしょうね。

・剱岳【データ】
山名:つるぎだけ

・【所在地】
富山県中新川郡上市町と富山県中新川郡立山町との境。富山地方鉄
道立山線立山駅の北東19キロ。富山地方鉄道立山駅からケーブル美
女平からバス・室堂から歩いて6時間30分で剱岳。三等三角点(29
97.07m)と写真測量による標高点(2999m・標石はない)と、須
佐之男神をまつった剱岳神社の小祠がある。地形図に山名と三角点
の標高と標高点の標高のみ記載。付近に何も記載なし。

・【名山】
「日本百名山」(深田久弥選定):第48番選定(日本二百名山、日
本三百名山にも含まれる)
「新日本百名山」(岩崎元郎選定):第42番選定

・【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
【標高点】緯度経度:北緯36度37分23.76秒、東経137度37分00.7秒
【三等三角点】緯度経度:北緯36度37分24.09秒、東経137度37分1.
7秒

・【基準点閲覧】国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」で検索
基準点(三角点):(基準点コード:TR35437744901)(点名:剱岳)
(冠字選点番号:景 27)(種別等級:三等三角点)(基準点成果
状態:正常)(測地系:世界測地系)(緯度経度:緯度 36°37′24.
0608、経度 137°37′01.6866)(標高:2997.07m)(基準点現況状
態:報告なし 20040825)(所在地:記載なし)(点の記図閲覧:可)

・【地図】
2万5千分の1地形図「剱岳(高山)」or「十字峡(高山)」(2図葉
名と重なる)。5万分の1地形図「高山−立山」

・【山行】
第6日目:2000年(平成12)7月30日(日・晴れ)剣岳山頂探訪:20
00年(平成12)7月25日(火)〜8月2日(水)「上野駅・富山駅・立
山駅・鍬崎山・室堂・剱沢・剣岳・立山・真砂沢・内蔵助谷・黒部
川・黒部ダム・黒部テント場・大糸線信濃大町駅・松本駅・新宿
駅」:「北ア鍬崎山・剱岳・剱沢・黒部ダム縦走」渡辺・滝口さんた
ちと同行

・【参考】
「古代山岳信仰遺跡の研究」大和久震平著(名著出版)1990年(平
成2)
「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
「富山県山名録」橋本廣ほか(桂書房)2001年(平成13)
「日本三百名山」毎日新聞社編(毎日新聞社)1997年(平成9)
「日本歴史地名大系16・富山県の地名」(平凡社)1994年(平成6)
「和漢三才図会」(巻第68)寺島良安:大阪の医師・寺島良安著(江
戸中期初頭・1712(正徳2)年の図入り百科事典):東洋文庫「和漢
三才図会・10巻」島田勇雄ほか訳注(平凡社)1988年(昭和63)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

 

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