山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼795号「孤高の高山植物・キタダケソウ」

【概略】
キタダケソウは、南アルプスの北岳だけに生える孤高の絶滅危惧種。
「国内希少野生動植物種(国内希少種)」最初の指定種。指定され
ているのはレブンアツモリソウ・キタダケソウ・ハナシノブの3種
と聞けばいっそう貴重な植物だと分かる。
・キンポウゲ科キタダケソウ属(ウメザキサバノオ属)の多年草。

▼795号「孤高の高山植物・キタダケソウ」

【本文】
キタダケソウという高山植物があります。名前のとおり、南アルプ
スの北岳(標高3192m、富士山に次ぐ日本第2位の高さ)の山頂近
くの小石まじりの草原にだけ生える植物。

これは近縁種が近くの山にあるわけではなく、遠く北海道の日高山
地のアポイ岳にあるヒダカソウのみという。

そういえば氷河時代、植物が次第に南に進出。しかしその後気候が
暖かくなるにつれ北へ退却、また高山にそのまま残ったものが高山
植物だそうです。

それならキタダケソウの仲間も温暖化するにつれ北岳とアポイ岳に
離ればなれになって生き残っているのでしょうか。

また、この花の美しいキタダケソウは乱獲がひどかったという。そ
のため山梨県では1985年(昭和60)、高山植物条例をつくり保護に
取り組みました。

その後、1993年(平成5)に「絶滅のおそれのある野生動植物の種
の保存に関する法律(種の保存法)」が施行されると、キタダケソ
ウは「国内希少野生動植物種(国内希少種)」の最初の指定を受け
て、いまは採取や売買に厳しい規制が加えられています。

ちなみに「国内希少種」指定の植物は、レブンアツモリソウ・キタ
ダケソウ・ハナシノブの3種が指定されていると聞けばいっそう貴
重な植物だと分かります。

キタダケソウは、茎の高さ10センチくらい。根生葉は群がって生え、
2回3出複葉(葉が3つに分かれ、その咲きに3枚の小葉をつけた
ものが主軸に互生し、その先端にまた3枚の小葉がつくような葉の
裂け方)で、裂片はさらに切れこみ全体に白っぽく見えます。

まだ頂上に雪が残る6〜7月に花茎を出し、その頂きに直径2セン
チ前後の白い花をひとつ咲かせます。がく片は五枚、花弁は6〜8
枚で、基には蜜腺があり、その周りは赤紫色をおびています。

多数のめしべがあり、なかに二個の胚珠があります。成熟するとひ
とつの種子のある痩(そう)果となり、丸く球状に集まります。花
が咲いたあと花茎が20センチくらいものびます。

キンポウゲ科のキタダケソウ属の多年草。朝鮮半島北部に分布する
ウメザキサバノオと同一という説もあり、図鑑によってはウメザキ
サバノオ属。

▼北岳【データ】
山名:きただけ

★【異名・由来】
由来:白根三山(しらねさんざん)の北端の山という意味でその名
があるそうです。白根は、標高が高くまわりの山々より冠雪期間が
長く、峰が白くめだつので白峰(しらね・根)と呼びます。山名は
「平家物語」の「手越(てごし・いまの静岡市)を過ぎていけば、
北に遠ざかりて雪白き山あり、問えば甲斐の白根とぞいう」という
歌からきており、地元では「甲斐ヶ嶺(根)」ともいうそうです。04
年10月、標高を3192mから3193mに訂正した。

★【所在地】
山梨県南アルプス市芦安(旧山梨県中巨摩郡芦安村)。中央本線甲
府駅の西30キロ。JR中央本線甲府駅からバス、広河原から歩い
て7時間45分で北岳(標高3193m)。三角点と標高点がある。三
等三角点(3124.4m)と写真測量による標高点(3193m)がある。
地形図に山名と三角点の標高、標高点の標高の記載あり。三角点よ
り北方向553mに肩の小屋がある。

★【名山】
「日本百名山」(深田久弥選定):第80番選定(日本二百名山、日
本三百名山にも含まれる)
「山梨百名山」(山梨県選定):第40番選定
「新・花の百名山」(田中澄江選定・1995年):第76 番選定

★【位置】国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索
【北岳標高点】緯度経度:北緯35度40分27.59秒、東経138度14
分19.75秒

【北岳三等三角点】緯度経度:北緯35度40分28.48秒、東経138
度14分19.95秒

★【地図】
2万5千分の1地形図「仙丈ヶ岳(甲府)」。5万分の1地形図「甲
府−市野瀬」

★【参考】
「高山植物」(野外ハンドブック・8)小野幹雄ほか(山と渓谷社)
1985年(昭和60)
「植物の世界・8」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1997年(平成9)
「植物の世界・14」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1997年(平成9)
「世界の植物・6」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1977年(昭和52)
「日本大百科全書・6」(小学館)1985年(昭和60)
「日本の野草」(山と渓谷社)1983年(昭和58)
「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

 

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