とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼791号「奥多摩・雲取山」

【概略】
江戸幕府編纂の地誌「新編武蔵風土記稿」に「ただ雲をも手に取る
ばかりの山なればとてかく号せり」と書かれる雲取山。雲取ヶ岳・
雲採山とも。また「平地に波瀾を起こした幾多の小山脈が…」小暮
理太郎も「山の憶い出」の中で綴る。
・東京都奥多摩町と埼玉県秩父市、山梨県丹波山村との境。

▼791号「奥多摩・雲取山」

【本文】
東京都の最高峰の雲取山(2017m)は、奥秩父にも奥多摩にも属す
東京都・埼玉県・山梨県境の山。

ここは東京都の水源涵養林で、巡視路をかねているせいかよく整備
されており、展望もよく四季を通して登山者に人気があります。首
都圏の山好き人なら一度は登ったことがあるはずです。

この山には古い時代から人が入っていたらしく、山頂付近で縄文時
代中期の打製石斧が発見されているそうです。山岳修験道が盛んだ
ったころは、いまの埼玉県側の妙法ヶ岳と白岩山、それに雲取山の
三峰駆けをする山伏によって登られていました。

この三山が三峰山で、三峰駆けの奥社となるのは雲取山だったとい
う。いまは妙法ヶ岳を奥社とする三峰神社に観光客や参詣者が訪れ
ています。

ここを雲取山というのは、このあたりで最も高い山なので雲に隠れ
やすいためとか、サルオガセ(針葉樹などの枝から糸状に垂れ下が
っている植物。きつねのもとゆいともいう)などのついた幽幻な森
林があるからなどの説があります。

また「新編武蔵風土記稿」には「ただ雲をも手に取るばかりの山な
ればとてかく号せり」とありやはり高さを強調した山名。

明治中期に河田羆(たけし)が著した「武蔵通誌」(山岳編)には
大雲取山の名が出てきます(『山の憶い出』)。これは熊野の大雲
取山からとった名前だとの説もあります。その他雲取ヶ岳・雲採山
などの名があるという。

「平地に波瀾を起こした幾多の小山脈が、彼方からも此方からもア
ミーバーの偽足のようにからみ合って、いつとなく五、六本の太い
脈に総合され、それがさらに統一されてここに初めて二千メートル
以上の高峰となったものが雲取山である。

甲信武甲の国境を東走してきた秩父山脈は、どの道この辺でこの位
な高度の山を掉尾(とうび)にふるい起こして、武蔵野に君臨せし
めねばならないはずだ」と、小暮理太郎は「山の憶い出」(秩父の
奥山・雲取山)のなかで述べています。なんとも気持ちのいい文章
です。

山頂には1等三角点のほか、1882年(明治15)に内務省地理局が設
けた「原三角測點」の標石もあります。

雲取山頂から雲取山荘方面に下ると田部重治(「山と渓谷」などの
著書)と、雲取山荘の主人だった富田治三郎の顕彰碑もあります。
雲取山荘は1928年(昭和3)、武州雲取小屋の名で建てられたもの。
それをきっかけに雲取山への登山者は一段と多くなったということ
です。

3月、避難小屋手前の雪の急斜面は登るのがきつい。息を切らして
山頂へ登りきります。快晴の雲取山頂は平日とあって人影もありま
せん。日光が雪に反射してまぶしくサングラスをはずせません。

方向指示板を撫でながら広がる山々を確認します。富士山が大きい。
時々起こるつむじ風に雪煙が舞い上がります。用もないのに避難小
屋を開けて中を確認します。

さすがに掃除が行き届いていてゴミひとつ落ちていません。すぐ下
のトイレに寄りました。冬季は凍結するため「小」のみ使用可。そ
の他はこの下方にある奥多摩小屋のものを使うようにとあります。

「ご用」のある人は大変だ。雪のなかをこけつ転びつしながら、4、
50分も駆け下りて行く気の毒な姿を想像しました。

・雲取山【データ】
山名:くもとりやま

・【異名・由来】
異名:雲取ヶ岳・雲採山。大雲取山(おおくもとりやま・熊野の大
雲取山からとった名前)

由来:このあたりで最も高い山なので雲に隠れやすいため。サルオ
ガセなどのついた幽幻な森林があるからなどの説

・【所在地】
東京都西多摩郡奥多摩町と埼玉県秩父市、山梨県北都留郡丹波山村
との境。青梅線奥多摩駅の北西15キロ。秩父鉄道三峰駅からバスで
三峰山頂、さらに歩いて5時間30分で雲取山。一等三角点(2017m)
と原三角測点と、避難小屋、トイレがある。地形図上には山名と三
角点と三角点の標高のみ記載あり。三角点より南方向直線約10mに
避難小屋、三角点より北方向直線約600mに雲取山荘、三角点より
南方向直線約1600mに奥多摩小屋がある。

・【名山】
「日本百名山」(深田久弥選定):第66番選定(日本二百名山、日
本三百名山にも含まれる)
「新日本百名山」(岩崎元郎選定):第33番選定
「山梨百名山」(山梨県選定):第14番選定
「花の百名山」(田中澄江選定・1981年):第41番選定
「新・花の百名山」(田中澄江選定・1995年):・第43番選定

・【位置】国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索
【雲取山一等三角点】緯度経度:北緯35度51分19.86秒、東経138度
56分37.94秒

・【基準点閲覧】国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」で検索
・基準点(三角点):(基準点コード:TR15338672501)(点名:雲取
山)(冠字選点番号:記載なし)(種別等級:一等三角点)(基準点
成果状態:正常)(地形図:甲府−三峰)(測地系:世界測地系)(緯
度経度:緯度 35°51′19.8299、経度 138°56′38.0782)(標高:
2017.09m)(基準点現況状態:正常 19980501)(所在地:東京都西
多摩郡奥多摩町大字日原字雲取1028)(点の記図:閲覧可×)

三角点は一等の部分がセメントで補修され、かくれてしまっている
(09年4月現在)。

原三角測点:明治十五年十二月、内務省地理局の銘がある。そばに
「この雲取山にある「原三角測點」は、現在の形の一等三角点が設
置される前、明治16年(1883)に埋設された測量標識で測量の歴史
に貴重なものです。平成10年6月 建設省国土地理院」との標識が
ある。

・【点の記】
閲覧不可

・【地図】
2万5千分の1地形図「雲取山(甲府)」。5万分の1地形図「甲府
−三峰」

・【山行】
第2日目:2008年(平成20)3月7日(金)快晴:雲取山探訪:20
08年(平成20)3月6日(木)〜7日(金)「奥多摩駅・小河内神
社・鴨沢バス停・小袖乗越・堂所・ブナ坂・奥多摩小屋テント場
(泊)・小雲取山・雲取山・小雲取山・奥多摩小屋テント場・ブナ
坂・七ッ石山・七ツ石小屋・堂所・小袖乗越・鴨沢バス停・奥多摩
駅」:「奥多摩雲取山山行時探訪」家内と同行

・【参考】
「角川日本地名大辞典13・東京都」北原進(角川書店)1978年(昭
和53年)
「山名の不思議」谷有二(平凡社)2003年(平成15)
「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
「新編武蔵風土記稿」:大日本地誌大系1「新編武蔵風土記稿」蘆
田伊人編(雄山閣)1963年(昭和38)
「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
「日本歴史地名大系19・山梨県の地名」(平凡社)1995年(平成7)
「日本歴史地名大系13・東京都の地名」(平凡社)2002年(平成14)
「武蔵通誌」明治中期:「山の憶い出」小暮理太郎「雲取山」に所
収:「日本山岳名著全集2」(あかね書房)1962年(昭和37)
「山の憶い出」小暮理太郎:「日本山岳名著全集2」(あかね書房)
1962年(昭和37)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

 

山旅イラスト【ひとり画通信】題名一覧へ戻る
………………………………………………………………………………………………
「峠と花と地蔵さんと…」トップページ【戻る】