とよた 時・山のゆ-もぁ-と(イラスト)
山旅漫歩゚
【ひとり画通信】

▼782号 「中ア・木曽駒と木曽御嶽山麓寝覚ノ床の伝説」

【概略】
竜宮城へ婿入りした太郎はにわかに故郷が恋しくなり、乙姫・太郎
そろって里帰り。途中たどりついた木曽山中。現世にもどれば些細
なことが不満になり夫婦げんか。乙姫は去り、華やかな夢からいま
目覚めた浦島太郎。ささやかな庵を結び想い出にふけり余生を送っ
たという。
・長野県上松町

▼782号 「中ア・木曽駒と木曽御嶽山麓寝覚ノ床の伝説」

【本文】
中央アルプス木曽駒ヶ岳(2956m)と木曽御嶽山麓の長野県木曽郡
上松町寝覚地区の木曽川河原に「寝覚ノ床」という所があります。
ここにはどういう分けか浦島太郎の伝説があるというのです。

1930年(昭和5)刊行の「山の伝説」(青木純二)によれば、ここ
が浦島太郎が玉手箱を開けたところだというのです。竜宮城へ婿入
りした太郎は「月日の経つのも夢のうち」でしたが、ある時遠くか
らかすかに聞こえてきた鶏の鳴き声ににわかに故郷の父母や友だち
を思い出しました。

そこで浦島は乙姫の父王に帰国を願い出ました。「夫婦そろってな
ら里へ参るがよかろう」との言葉に喜んだ浦島と乙姫は、新道をた
どりふるさとに急ぎました。やがて浦島は生まれた里と似ても似つ
かない深山幽谷の川辺にたどり着いたのでした。

乙姫は、谷川の流れ、咲き乱れる草花、小鳥がほがらかなさえずり、
やわらかにしっとりと吹く風に、喜んでいます。しかし月日が経ち
乙姫が土地になれるに従い、浦島は乙姫に対する態度がつれなくな
り、言葉も荒々しくなっていきました。

二人は次第にけんかもするようになり、怒った乙姫は竜宮城に帰っ
てしまいました。仕方なく竜宮城に迎えに行った浦島は、乙姫を連
れ戻すと、乙姫が竜宮城へ帰る近道を大石でふさいでしまいました。

さあ怒ったのは乙姫さま。こんどは浦島が竜宮から帰ってきた穴に、
呪文を唱えて水がふき出るようにしてしまったのです。

そして「私はこれでおいとまします」というが早いか、紫の煙とな
って浦島がふさいだ大石の裂け目から吸い込まれるように消え、竜
宮城へ帰ってしまいました。

驚いた浦島は、乙姫の名を呼びながら泣き叫んだが姫の姿は帰って
きません。浦島はなお乙姫が恋しく谷川を歩き回りました。そんな
時、ふと岩陰に乙姫が持っていた玉手箱を見つけました。

喜んだ浦島は思わず玉手箱のふたを開けてしまいました。玉手箱か
ら立ちのぼった紫の煙が顔を覆ったせつな、浦島太郎はたちまち6
百余歳の老人と変わり果てていたのです。

竜宮城の華やかな夢からいま覚めた浦島太郎。そこにささやかな庵
を結び若き日の想い出にふけりながら孤独に余生を送ったというこ
とです。浦島太郎が現世に目覚めた場所、それがここ木曽の「寝覚
ノ床」だったというわけです。

また、江戸時代後期の天明8年(1788)、京都の大火で炎上した東
本願寺の再建のため、浜松の齢松寺の僧侶が遠山に材木を探し求め
伐り出した時、いろいろな不思議なことにあったことを記したとい
う「遠山奇談」(浄林坊辨惠著)にも「寝覚ノ床」のことが載って
います。

「阿倍末の寝覚ノ床は土俗傳へて浦島太郎が住ける地なりといひ、
また三帰翁となんいへる隠者の住みける処ともいふ。……三帰翁は
私に思ふに三喜翁にあらすや。「雍州府志」に寛政年中武蔵国河越
に……(漢文で三喜翁について説明)……。此人の乱世を厭ひてこ
の深山の中にかくれ終はられしも知るべからず。今みかへり翁と唱
ふるは、三喜を三帰となし……。再按するに、三喜翁を土人推して
神仙となし、これを假稱して浦島なと呼たりしを、遂に此兩人を住
せしとあやまり傅へしにあらずや」とあります。

ガスで寒かった木曽駒ヶ岳山頂から逃げるように木曽側に下山し途
中で一泊。翌日上松町は一転し真夏の炎天下。寝覚ノ床を散策しま
す。

大岩の上に、浦島太郎が弁財天像を残したといわれている浦島堂が
建っています。太陽に焼けていたたまれないような花崗岩の間を歩
くと頭がクラクラします。

寝覚ノ床美術公園の日影で寝転がります。そうだこれから南木曾駅
まで南下。南木曾岳に行かねばなりません。早々に引き上げ上松駅
に向かいました。それにしても暑い。

・寝覚ノ床【データ】
山名:ねざめのとこ

・【異名・由来】
由来:浦島太郎伝説

・【所在地】
長野県木曽郡上松町。JR中央線上松駅からバス10分で寝覚ノ床。
神社の祠と近くに記念公園がある。地形図上には地名(寝覚の床)
と鳥居の神社記号のみ記載。

・【位置】国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索
【寝覚ノ床】緯度経度:北緯35度46分21.05秒、東経137度41分57.2
3秒

・【地図】
2万5千分の1地形図「上松(飯田)」

・【山行】
第3日目:2004年(平成16)7月30日(金)晴れ。寝覚ノ床探訪:
2004年(平成16)7月28日(水)〜8月3日(火)「駒ヶ根駅(無
人)・ロープウエイ・千畳敷・木曽駒ヶ岳・敬神の滝・寝覚ノ床・
上松駅・南木曾駅・尾越バス停・南木曾岳山麓蘭キャンプ場・南木
曾岳・蘭キャンプ場・尾越バス停・南木曾駅・中津川駅・ウエスト
ン公園停留所(川上)・恵那神社・恵那山前宮ルート登山口河原・
中の小屋跡・空峠神坂峠ルート分岐・恵那山・恵那山神社・ウエス
トン公園・中津川駅」:「木曽駒ヶ岳・南木曾岳・恵那山」中ア縦走

・【参考】
「遠山奇談」華誘居士:「日本庶民生活史料集成16・奇談奇聞」編
集委員代表・谷川健一(三一書房)1989年(平成元)
「日本の民話・10」(信濃・越中篇)(未来社)1974年(昭和49)
「山の伝説・日本アルプス編」青木純二(丁未出版)1930年(昭和
5)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

 

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