山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼775号 「南ア・半神半鬼夜叉の峠」

【概略】
夜叉峠には荒ぶる神夜叉神をまつる石祠があり、峠の名はこの神か
ら来ているという。また異説もありこの付近には、床柱や挽き物細
工に使うヤシャブシという木が生えており、このヤシャブシ林の「り
ん」が「ジン」になまってヤシャジンになったともいわれているそ
うな。
・山梨県南アルプス市

▼775号 「南ア・半神半鬼夜叉の峠」

【本文】
南アルプスの入口・夜叉神峠は、山梨県南アルプス市の高谷山(た
かたにやま)と大崖頭山(おおくずれあたまやま)との鞍部にある
峠。

昔、村人はこの峠を越えて野呂川に入り、小屋に泊まり込みで炭焼
きをしたり、野呂川の流れで木材をいかだで麓に運んだといいます。

ところで夜叉神峠には夜叉をまつる石祠があります。夜叉は神通力
を自由にあやつる、インド古代ヴェータ聖典以来の半神半鬼。のち、
仏教に取り入れられてからは、毘沙門天の眷属として人間を助け、
また利益を与えるようになったという。

しかし、その激しい性格は変わらず、信仰心のないものには害をお
よぼすたたり神だそうです。特に「女夜叉」は凶悪な性格で、人間
の血や肉を平気で喰らうというからしまつが悪い。

夜叉神峠はカラマツ林を通して白根三山の展望台になっています。
かつて桃ノ木鉱泉のそばを流れる水出川(いまの御勅使川・みだい
がわ)の上流に、暴れん坊の神(夜叉神)がすんでいたという。

この神は、疫病をはやらせ、暴風を自由にあやつり、洪水を呼んで
悪事悪業の仕放題。はじめは恐れおののいていた村人も、ついに我
慢できなくなりお互いに相談。夜叉神をまつりあげ、御勅使川が望
めるこの峠に石祠を建てて封じ込めたという。

それからは災害はなくなり、いまは豊作の神、縁結びの神になって
いるといいます。また夜叉神峠名の由来には異説があって、かつて
この峠付近には、床柱や挽き物細工に使うヤシャブシという木がた
くさん生えていたという。

ヤシャブシは漢字で夜叉五倍子。ハンノキ科のハンノキ属の落葉小
高木。このヤシャブシ林の「りん」が「ジン」になまってヤシャジ
ンになったともいわれているそうな。ほんとかいな。

▼夜叉神峠【データ】
山名:やしゃじんとうげ

★【異名・由来】
由来:夜叉神伝説

★【所在地】
山梨県南アルプス市芦安(旧山梨県中巨摩郡芦安村)。中央本線韮
崎駅の南西12キロ。JR中央本線甲府駅からバス、夜叉神峠入口か
ら歩いて1時間15分で夜叉神峠。地形図に峠名と記念碑記号のみ記
載。標高記載なし。峠より北方向直線約90mに夜叉神峠小屋がある。
(1760m標高記入なし)

★【位置】国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索
【夜叉神峠】緯度経度:北緯35度38分14.8秒、東経138度20分11.6


★【地図】
2万5千分の1地形図「夜叉神峠(甲府)」

★【参考】
「甲斐国志」(松平定能(まさ)編集)1814(文化11年):(「大日本
地誌大系」(雄山閣)1973年(昭和48)
「角川日本地名大辞典19・山梨県」磯貝正義ほか編(角川書店)19
84年(昭和59)
「夜叉神峠の由来」夜叉神峠小屋パンフ

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

 

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