とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼769号 「サルが食べたか山道にアケビの皮」

【概略】
山道にアケビの皮が落ちている。猿が食べたあとなのか。アケビは
食べると甘いがタネが多いのが欠点。山里育ちの人たちはタネごと
飲み込むという。熟すと口をあけるので「開け実」、口をあけない
ムベが口を開けたという「アケウベ」からきたのだという説がある。
・アケビ科アケビ属のつる性植物

▼769号 「サルが食べたか山道にアケビの皮」

【本文】
秋の山道にアケビの皮が落ちています。中味がありません。サルで
も食べたあとなのでしょうか。どこに木があるのか、まだ実が残っ
ているか気になります。

見あげる首が痛くなるころ、「あった、あった」。皮がさけ、おいし
そうな果肉をあらわしています。でもとてもとれる高さではありま
せん。くやしまぎれに「ほかのサルに残してやろう」などと、ひと
りごと。

アケビの果肉は、食べると甘いですがタネが多いのが欠点。いちい
ち吐き出しているのは都会育ちの人。山里育ちの人たちはタネごと
飲み込んでしまいます。

アケビの果肉は、食べるとむくみのよいといわれています。アケビ
は熟すと口をあけ、中味を出すので「開け実」・「欠び」・「開けつび」
の意味からきたのだという説と、同じ科で口をあけないムベが口を
開けたという意味の「アケウベ」がつまってアケビになったのだと
いう説があります。

平安時代の931〜938成立の分類体漢和対照辞書「倭名類聚抄」(わ
みょうるいじゅしょう)などの文献には、「開けつび」からきたと
あります。「つび」とは女性のナニの古名だそうです。

アケビの若葉やつる先は、ゆでてあくを抜いて、ゴマ和えや油みそ
和え、酢じょうゆ油、油いためにしたり、塩漬けにしても食用され
ます。

一度蒸してから軽く炒ったり、そのまま刻んで干しフライパンで軽
く炒ってまた干し、熱湯を注いで「アケビ茶」として利用するとい
う。

また、果実の皮もゆでて一晩水にさらしてあくを抜き、刻んで油で
いため、砂糖を入れて和えながら煮込んで食べたりします。

中国明時代の本草書で、飢饉の時に救荒食物として利用できる植物
を解説した「救荒本草」にも「嫩果(どんか・若くてやわらかい実)
を採り、水を換え煮食す。樹にて熟する者もまた摘み食うべし」と
あり、奨励しているそうです。

あのタネも食用油原料になり、また軽く焙って焦がして食べたり、
果肉といっしょによく噛んで食べたりします。

蔓は、アケビ細工として、どびん敷き、果物かご、おしぼり入れ、
状差しなどをつくります。

大きくなった蔓は、薬用としても利用されます。生薬名は木通(も
くつう)。成分にアケビン、多量のカリ塩を含み、消炎性の利尿薬
として、漢方で脚気、利尿剤、むくみに利用するという。

ところでアケビのつるは右巻きです。この右巻きか左まきかについ
ての覚え方があります。棒などを親指を立てるようにして握ります。
そのとき右手の人差し指で曲げた方向にまけば右巻き。左手なら左
まきとするのだそうです。

アケビにはこのアケビのほか、小葉が3個あるミツバアケビや5個
あるゴヨウアケビがありますが、みな食べられます。アケビは春に
花が咲きます。ふつう雌花と雄花が同じ株につき、しばしば雄花に
は退化した雌しべがあり、雌花には退化した雄しべがあります。

アケビに似たものにムベがあります。同じように食べられますがム
ベは口が開きません。アケビの「ア」と発音する時は口を開きます
が、「ムベ」は口を閉じてからいいます。

こんな所から覚えると覚えやすいですよ。口を開けて発音すればア
ケ実、口を閉じて発音すればム実、なまってアケビとムベとなった
という、前川文夫が発表した説もあります。

またアケビは、がく片3枚で、葉が落葉性なのに対して、ムベはが
く片6枚で冬でも葉が落ちない常緑なのが違います。
・アケビ科アケビ属のつる性植物

・【データ】
【名前】:アケビは熟すと口をあけ、中味を出すので「開け実」・「欠
び」・「開けつび」の意味からきたのだという説と、同じ科で口をあ
けないムベが口を開けたという意味の「アケウベ」がつまってアケ
ビになったのだという説。

・【参考】
「植物の世界・1」(朝日新聞社)1996年(平成8)
「植物の世界・8」(朝日新聞社)1996年(平成8)
「世界の植物・6」(朝日新聞社)1975年(昭和50)
「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

 

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