山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼757号 「秩父城峰山・将門とお猫さま」

【概略】
平将門が天慶の乱で城を築いたとの伝説のある城峰山(1038m)。
山頂直下の城峰神社には将門の守り本尊十一面観音の眷属お猫さま
が赤い口をした狼のこま犬と共にユニークな表情で迎えてくれる。
静かな境内はキャンプ場にもなっている。
・埼玉県神川町と皆野町、秩父市との境

▼757号 「秩父城峰山・将門とお猫さま」

【本文】
平安時代の天慶2年(939)、平将門が同族間の争いに端を発した戦
いで、一時関八州を支配。自ら新皇と称して関東自立の構えです。

しかし、やがて藤原秀郷(ひでさと)らの連合軍に下総で敗れまし
た。その時、将門(将門とも弟の御厨三郎将平ともいう)が秩父に
逃れきて、この石間ヶ岳に陣を張って城を築いたという伝説があり
ます。そのことからここを城峰山と呼ぶようになったという。

やがて藤原秀郷が兵を率い、いまの秩父市吉田小学校あたりに陣を
張り、将門の軍とにらみあいます。

ある日、秀郷が椋(むく)神社に参拝して将門の捕獲を祈願します。
すると突如、城峰山にネズミの大群が発生して、鎧(よろい)など
の武具のひもを噛み切り、使用できなくしてしまいました。そのた
め将門は捕らえられ、秀郷の前に引き出されました。

ところが同じ顔姿の影武者がぞろぞろあらわれたのです。みな同じ
姿格好で、どれが本物か分かりません。しかし将門の愛妾だった桔
梗(ききょう)が将門を裏切り、どれか本物か証言してしまったの
です。

捕らえられた将門は、桔梗をにらみつけてひとこと「桔梗あれども
花咲くな」と言い残したあと、首をはねられたというのです。それ
以来、城峰山では植物のキキョウの花が咲かなくなったという。

また、愛妾の桔梗がこっそり山を抜け出して秀郷に内通したと疑い
を抱かれ、将門に首をはねられたため、キキョウの花が咲かなくな
ったとする説もあるそうです。「秋の七草うすむらさきの 花の桔
梗はなぜ咲かぬ 城峰昔の物語」と秩父小唄にも歌われています。

城峰山山頂直下にある城峰神社は藤原秀郷をまつる神社。やはり神
も勝った者を神とするのですね。ここのこま犬はオオカミを形どっ
ていて、赤い口に金色の目が光っています。

ここのお犬さま(オオカミ)の守り札は、かつては高崎や前橋市あ
たりからももらい受けに来たという。それより面白いのはお犬さま
のうしろにある「お猫さま」の石像で、愛嬌のある表情でハイカー
を迎えてくれています。

お猫さまは十一面観音の眷属だという。また十一面観音は平将門の
守り本尊と聞けば合点がいきます。このあたりは山中に戦度平・神
泉・藤原・矢納・門平などの地名があるように将門伝説にあふれて
います。

▼城峰山【データ】
山名:じょうみねさん

★【所在地】
埼玉県神川町(旧神泉村)と皆野町・秩父市(旧吉田町)との境。
秩父鉄道皆野駅の北西9キロ。秩父鉄道皆野駅からバス、西門平バ
ス停から歩いて1時間40分で城峰山(標高1037.7m)。一等三角点
(1037.7m)と、電波塔、それに展望台がある。山頂直下に城峰神
社がある。地形図上には山名と三角点の記号とその標高、それに電
波塔記号のみ記載。三角点より西方向直線約300mに城峰神社があ
る。

★【ご利益】
城峰神社:災難厄除け 五穀豊穣 商売繁昌 安産祈願

★【位置】国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索
【城峰山一等三角点】緯度経度:北緯36度05分51秒、東経139度00
分28秒

★【地図】
2万5千分の1地形図「鬼石(宇都宮)」or「万場(長野)」(2図葉
名と重なる)。5万分の1地形図「宇都宮−寄居」

★【参考】
「秩父お犬様紀行」秋澤英雄(「あしなか」238号(山村民俗の会)
1994年(平成6)所収
「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

 

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