とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼710号 「北ア・針木岳は地蔵岳」

【概略】
信州・越中交流の針ノ木峠越え。北西の針木岳は峠の名前から後で
名づけた山だという。信州側では蓮華岳の陰で見えず名がなかった
が越中側では地蔵岳と呼んでいた。それは峠道にあった松本の遊女
を弔う地蔵尊にちなむという。
・長野県大町市と富山県中新川郡立山町との境

▼710号 「北ア・針木岳は地蔵岳」

【本文】
北アルプス後立山連峰の日本三大雪渓のある針ノ木峠。信州(長野
県)・越中(富山県)の境にありここを越えての交流の道は昔から
知られていたという。

北西の針木岳は峠の名前から後で名づけた山。信州側では蓮華岳の
陰で見えず名がなかったが越中側では地蔵岳と呼んでいました。そ
れは峠道にあった遊女を弔う地蔵尊にちなむという。

昔、松本に雛菊という遊女がいました。そこへ越中の若者があらわ
れ、二人は恋に落ちました。しかし若者は病気になり「故郷の親に
知らせてくれ」と言い残し息を引き取ります。

遊女は大町の若者の案内で越中へ行くため峠へ向かいました。やが
て雨が雪に変わり次第に深く積もりだします。二人は必死に歩き続
けますがいつか道に迷い、若者は谷底に落ちてしまいました。

ひとり残った雛菊になすすべもなくついに雪の峠に散ったという。
それを知った村人は小さな地蔵を建てたという。その地蔵を建てた
場所は、針ノ木峠道だとするものと(「山の伝説」)、針ノ木岳とす
るものがあります(「信州山岳百科」)。

しかし、なぜ地蔵岳が越中側だけの名なのか。これは峠越えの守り
神として越中側で地蔵の名をつけたともいいます。

明治43年中村清太郎が無名の山と思いこみ、峠の名にちなみ針木岳
と命名したという。また大正初期、辻本満丸が命名したとの説もあ
ります。

そういえば長野県側大町市からは手前の蓮華岳の後ろに隠れてこの
山は見えないため、長い間山名がなかったといいます。

ある夏、雪渓を登り針ノ木峠へ。山小屋の後ろから登ったテント場
のテントを張ったあと、無駄とは思いましたが地蔵を探します。あ
っちこっちと歩き回りましたが見あたりません。

それなら針ノ木岳の方にあるのか。翌日、針木岳に登り、ザックを
置いて探しましたがはやり同じです。

あまりひと様が立ち止まったり休んだりするような所でもない場所
で、ザックをおいてあっちウロウロ、こっちウロウロ。登山者の中
には不審者と勘違いして、遠くからジッと監視する人までいるしま
つ。ご心配かけてすみません。

▼【データ】
【山名】
・【異名、由来】:大町市からでは蓮華岳の後ろに隠れて見えないた
め、長い間山名がなかったが、大町近郊の人たちは「厩窪(うまや
くぼ)の頭」と呼んでいたらしい。越中側では地蔵岳。1910年(明
治43)中村清太郎が無名の山と思いこみ峠の名にちなみ針ノ木岳
と命名(「日本歴史地名大系・富山県」)。また大正初期、辻本満丸
が針ノ木峠にちなんで針ノ木岳と命名した(「角川日本地名大辞典
・長野県」)との説もある。

【所在地】
・長野県大町市と富山県中新川郡立山町との境。JR大糸線信濃大
町駅バス(40分)で扇沢、歩いて5時間半で針ノ木峠、さらに1時
間で針ノ木岳。三等三角点(2820.6m)がある。地形図に山名と三
角点の標高のみ記載。三角点より東方向直線約880mに針ノ木峠と
針ノ木小屋、標高点(2530m)がある。

【名山】
・深田クラブ選定「日本二百名山」(第163番):日本百名山以外に1
00山を加える・日本三百名山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(含まれず)
・「甲信越百名山」(第41番)
・清水栄一選定「信州百名山」(第55番)
・田中澄江選定(1981年)「花の百名山」(含まれず)
・田中澄江選定(1995年)「新・花の百名山」(第70番・花の名前)

【位置】
・【三等三角点】緯度経度:北緯36度32分17.22秒、東経137度41分0
3.77秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【基準点の詳細】
・基準点(三角点):(基準点コード:TR35437654401)(点名:野口)
(冠字選点番号:景 18)(種別等級:三等三角点)(基準点成果
状態:正常)(地形図:高山−立山)(測地系:世界測地系)(緯度
経度:緯度 36°32′17.0809、経度 137°41′03.9203)(標高:28
20.60m)(基準点現況状態:露出 19880814)(所在地:長野県大町
市大字野口字篭川谷2117俗称小スバリ頭)(点の記図閲覧:×)
(国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」から検索)

【点の記】
・閲覧不能

【地図】
・2万5千分の1地形図「黒部湖(高山)」。5万分の1地形図「高
山−立山」

【山行】北ア後立山連峰・針ノ木峠・五竜岳縦走
・第3日目:1999年(平成11)8月19日(木・快晴)針ノ木岳探訪
:1999年(平成11)8月17日(火)〜23日(月)「新宿駅・松本駅
・大糸線信濃大町駅・扇沢・針ノ木雪渓・針ノ木峠・冷池・爺ヶ岳
・鹿島槍ヶ岳・八峰キレット・五竜岳・遠見尾根・小遠見山・見返
り坂・民宿金長・神城駅・松本駅・新宿駅」

【参考】
・「山の伝説・日本アルプス編」青木純二(丁未出版)1930年(昭
和5)
・「信州山岳百科・1」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・「日本歴史地名大系16・富山県の地名」(平凡社)1994年(平成6)
・「角川日本地名大辞典20・長野県の地名」市川健夫ほか編(角川
書店)1990年(平成2)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

 

 

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