とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼709号 「北ア剱岳小窓・いまだ果たせぬ雪渓歩き」

【概略】
大窓、小窓、三の窓とならぶ剱の窓。キレットから流れる小窓雪渓。
いよいよ楽しみにしていた雪渓下り。その時、「あたし、アイゼン
用意してこなかった」と一人の女性。えっ。だってェ、打ち合わせ
の時…。アア、いまだ果たせぬ小窓雪渓。後立山連峰の尾根から眺
める。
・富山県立山町と上市町の境

▼709号 「北ア剱岳小窓・いまだ果たせぬ雪渓歩き」

【本文】
北アルプス立山の北にそびえる劔岳には、窓と呼ばれる所がいくつ
かあります。窓とは、稜線がV字形に鈍く切れ込んだ所(キレット)
をいう越中地方の言葉だそうです。

昔の山の歌にも、「劔見るなら赤谷(あかたん)尾根でヨ、大窓、
小窓にネ、三の窓、よかネ……という歌詞があります。キレットを
北側から順に大の窓、小の窓そして三番めの窓というわけです。

なかでも三ノ窓は、近くにチンネ、クレオパトラニードル、八ッ峰
などロッククライミングの岩峰を従えた鞍部で、山をやる人なら小
窓とともに一度は行って見たい所。

ある年の9月、劔岳から三の窓を通り、小窓雪渓を下るというパー
ティーにおそるおそる参加してみました。劔岳山頂から北方へつづ
く岩稜をたどると、東側前方に八峰から一峰へ下る岩峰八ツ峰です。
その上に「岩ヤさん」が「岩遊び」をしている姿が眺められます。

池の谷(たん)乗越から岩が覆いかぶさった薄暗いの砂地のガリー
を下って三ノ窓に下り立ち、小休止します。鼻がつかえるように「小
窓の王」がそびえたっています。

その岩壁の肩から二つの人影が現れます。ザイルで確保されながら
降りてきた女性は、こういっちゃ失礼だがかなりなお年です。確保
しているのは有名なガイドさんとか。

笑いながらしばらく話し込みます。「小窓の王」のピークへの急登。
小窓の頭を通り、やっと小窓につきました。小窓雪渓が流れるよう
に続いています。楽しみにしていた雪渓下り。ザックを下ろし、中
からアイゼンを取りだします。

その時、「あたし、アイゼン用意してこなかった」と一人の女性。
えっ。だって事前の打ち合わせにアイゼン持参と確かにあったゾォ
……。あァ持ってこなくては仕方ない。

リーダーの判断で、池平山経由で仙人池方面へ下ることになりまし
た。数年後、こんどは剱沢を下り小窓雪渓を下から登る計画に挑戦
しました。

しかし剱沢小屋キャンプ場で、雨に降られて停滞したのがたたって
予備日を使い切り、あっさり内蔵助谷経由で黒部ダムへ…。

いまでも後立山連峰の稜線を歩くたびにくっきりと白い帯がたれ下
がる、あの小窓雪渓を熱い視線で見つめています。山も逃げますね。

▼【データ】
【所在地】
・【室堂から小窓】・富山県立山町と上市町の境。尾根コース:富山
地方鉄道立山駅からケーブル美女平からバス・室堂から歩いて6時
間30分で剣岳山頂、さらに5時間で小窓。地形図に小窓の文字のみ
標高数字なし。小窓より東北方向500mに池平山がある。付近に何
も記載なし

【位置】
・【小窓】北緯36度38分11.96秒、東経137度37分24.92秒(国土地理


【地図】
・2万5千分の1地形図「剱岳(高山)」or「十字峡(高山)」(2図
葉名と重なる)(国土地理院「地図閲覧サービス」から検索)

【山行】剱岳から小窓・仙人池・黒部ダム縦走
・第3日目:1987年(昭和62)9月14日(月・晴れ)剱岳小窓探訪
:1987年(昭和62)9月12日(土)夜行〜9月15日(火)「上野駅・立
山駅・室堂・雄山・剣沢小屋・剱岳・三ノ窓・小窓・池の平山・仙
人池・二股・真砂沢山荘前・ハシゴ谷乗越・内蔵助出合・下の廊下
出合・黒部ダム・扇沢・大糸線信濃大町駅・松本駅・新宿駅」

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

 

 

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