とよた 時・山のゆ-もぁ-と(イラスト)
山旅漫歩゚
【ひとり画通信】

▼708号「奈良吉野・義経隠れ堂と静御前」

【概略】
奈良県吉野・奥千本の義経ゆかりの隠れ堂。吉野山で舞った静御前
の美の姿ヒトリシズカ。さらに若菜つみの女性に乗り移った静御前
の霊が勝手明神の神職の前で舞いはじめ、やがて亡霊も姿をあらわ
し、女性と二人になり義経との昔語りをしながらフタリシズカとな
って謡いあげてゆく。
・奈良県吉野郡吉野町

▼708号「奈良吉野・義経隠れ堂と静御前」

【本文】
奈良県吉野・奥千本の金峰山(きんぷせん)神社のそばに源義経ゆ
かりの隠れ堂というお堂があります。

哀れにも義経において行かれてしまった静御前。その名をつけたセ
ンリョウ科の植物ヒトリシズカという野草。江戸時代・1712(正徳
2)年発行の図入り百科事典「和漢三才図会」(大阪の医師・寺島
良安著)に「静とは源義経の寵妾にして吉野山に於て歌舞の事あり。
好事者、其美を比して以て之に名づく」とあります。

また同じフタリシズカという野草もあり、同書に、「俗謡に云う、
静女の幽霊二人と為り同じく遊舞す、此花二朶(だ)相並び艶美な
り、故に之に名く」とあります。

ある年の正月7日、吉野の勝手明神の神職が女性に若菜摘に行かせ
たという。そこへ静御前の霊があらわれ「経を書いて回向(えこう)
をしてくれ」という。霊は女性に乗り移り、自分は静御前だと名乗
ります。

神職が神社宝蔵の舞い衣装を着せると女性は舞いだしました。やが
て亡霊も姿をあらわし二人になって舞いはじめました。

「しづやしづ、賤(しず)の苧環(おだまき)繰り返し、昔を今に
なすよしもがな」。春に吉野で楽しく過ごした義経との昔語りをフ
タリシズカとなって謡いあげていくのでありました。

ある年(2004年)の春、吉野の下千本、中千本はサクラの花が真っ
盛り。それでも上千本から奥千本に行くに従い花も少なく春もまだ
浅い感じがします。

金峰山の金峰神社まで行って驚きました。以前訪れたとき、ポリタ
ンクに水を頂いた社務所がないのです。そばのお知らせ板に火事で
全焼したとあります。

見れば焼けこげた板や木の破片が散乱しています。失火なのでしょ
うか、放火なのでしょうか。すぐそばにある金峰山神社や義経隠れ
堂は無事でした。炎症を免れたのは不幸中の幸いです。

中千本あたりまでは観光客があふれるようににぎやかだったのに、
人影のないこの空間のこの静寂。木陰から垣間見える隠れ堂も何か
寂しげでした。

▼【データ】
【所在地】
・奈良県吉野郡吉野町吉野山。ロープウエー吉野山駅からバス25分、
終点の奥千本口から徒歩10分で義経隠れ堂。義経隠れ堂のすぐ西側
に金峰神社金峰神社がある。

【位置】
・【義経隠れ堂】緯度経度:北緯34度20分34.1秒、東経135度52分55.
6秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「新子(和歌山)」(国土地理院「地図閲覧
サービス」から検索)

【山行】吉野・金峰山・蜻蛉の滝・高野山・小辺路・熊野神宮・那
智の滝縦走
・第2日:2004年4月1日(木・晴れ)吉野義経隠れ堂探訪:2004
年(平成16)年3月31日(水)〜4月9日(金)「吉野駅・青根ヶ峰
・蜻蛉の滝・大滝バス停・大和上市駅・吉野口駅乗り換え・五条駅
乗り換え・極楽橋駅・高野山奥ノ院・薄峠・熊野古道小辺路・萱小
屋跡・五百瀬・十津川温泉・熊野ワクワクの郷キャンプ場・熊野大
社・新宮駅・那智の滝・新宮駅・名古屋駅」:家内と同行

【参考】
・「日本伝説大系9」保仙純鋼ほか(みずうみ書房)1984年(昭和5
9)
・「和漢三才図会・巻第九十四の末」(吉野静、二人静)寺島良安:
東洋文庫「和漢三才図会17」訳注・島田勇雄ほか(平凡社)1991
年(平成3)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
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