山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

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▼702号「茨城加波山タバコ神社大ギセル」

・【概略】
709mと標高は低いが、歴史といわく因縁のある加波山。葉タバコ
を傷つける雹を降らせる雲を追い払う霊験があるとされ、いつのこ
ろからか山頂近くに加波山たばこ神社がまつられ毎年9月に巨大な
きせるを奉納するきせる祭りが行われる。
・茨城県真壁町と八郷町との境

▼702号「茨城加波山タバコ神社大ギセル」

【本文】
茨城県にある加波山(かばさん)は、709mと標高は低いですが、
中世は修験の霊場として栄えたところ。奇岩岩窟の中に加波山岩屋
禅定の修行場があちこちにあります。

また山の肩には加波山神社が「光り輝いて」建っています。この山
の名は、ここにまつってある加波山神社・加波山三枝祇神社の庭・
神の庭(社庭・かんば)がなまってカバサンになったとの説もあり
ます。

山中には天狗の伝承も多い。さらに1884年(明治17)年、自由民権
運動の急進派らが明治政府を打倒をはかった加波山事件の際立てこ
もったあとなどもあり、歴史といわく因縁のある山です。

その山頂近くに加波山たばこ神社という社があります。ここにまつ
られる神々は、山の神である大山祇命(おおやまづみのみこと)、
野の神である鹿屋野比売命(かやぬひめのみこと)を主とし、生産
の神である大国主命(大黒さま)などとともに八雷神(はちらいじ
ん)がいます。

八雷神は落雷やタバコの成育に害のある雹(ひょう)を降らせる雲
を払うとされ、ふもとのタバコ栽培農家の信仰を集めた神だそうで
す。1958年(昭和33)に神奈川県丹沢大山阿夫利(あふり)神社(祭
神が雷神)を勧請しています。

毎年9月5日にはキセル祭りも行われます。キセルは長さ2.6キロ、
重さ60キロの巨大なもの。加波山神社でがん首に刻みたばこを詰め
て火付けの儀式が行われ、紫煙をくゆらせながらさらに上部のたば
こ神社に担ぎ上げ奉納します。ことしのタバコの豊作を感謝し、来
年の豊作を祈る行事だそうです。

▼【データ】
【山名】・加波山(かばさん)・神庭山(かんばやま)・神母山・樺
山・加葉山・蒲山。筑波山、足尾山と合わせて「常陸三山」と呼ば
れている。この山にまつってある加波山神社・加波山三枝祇神社の
庭・神の庭(社庭・かんば)がなまってカバサンになった。日本武
尊が東征の折り、ここに祠を建てたといわれている。

【所在地】
・茨城県桜川市真壁町(旧真壁郡真壁町)と茨城県石岡市旧八郷町
各地区名(旧新治郡八郷町)との境。水戸線羽黒駅の南6キロ。加
波山。三等三角点(標高709.0m)がある。地形図に山名と三角点
の標高と加波山神社の記載あり。三角点の北方287mに神社鳥居記
号がある。

【位置】
・三角点:【緯度経度】北緯36度17分55.75秒、東経140度08分37.15
秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「加波山(水戸)」(国土地理院「地図閲覧
サービス」から検索)。5万分の1地形図「水戸−真壁」(「電子国
土ポータルWebシステム」から検索)

【参考】
・「角川日本地名大辞典8・茨城県」杉山博ほか編(角川書店)198
3年(昭和58)
・「産業の神々」林正巳(東京書籍)1981年(昭和56)
・「祖神・守護神」川口謙二(東京美術)1979年(昭和54)
・加波山神社パンフ(山岳ファイル)
・「古代山岳信仰遺跡の研究」大和久震平著(名著出版)1990年(平
成2)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「図聚天狗列伝・東日本編」知切光歳(三樹書房)1977年(昭和5
2)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「日本歴史地名大系8・茨城県の地名」(平凡社)1982年(昭和57)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

 

 

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