とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼701号 「山の植物・ガマズミと鎌酸実と鎌柄」

・【概略】
ガマズミのガマは鎌、ズミは酢実または染めだという。鎌の柄に利
用された材、甘酸っぱく衣服の染料に利用された実から来ていると
いう。また鎌柄との説もある。ガマズミの方言は全国に231ある
というからただごとではない。それほど親しまれた植物らしい。
・スイカズラ科ガマズミ属の落葉低木

▼701号 「山の植物・ガマズミと鎌酸実と鎌柄」

【本文】
野山を歩いていると赤い実がびっしりついている木を見つけます。
ガマズミの実が赤く熟しているのです。小さな実のひとつ、ひとつ
が日光に光ってとてもきれいです。

ガマズミの実は2,3回霜にあたると急に甘くなって食べられます。
昔を思い出しているのかハイキング帰りのおじさんおばさんがニコ
ニコしながら口にほおばっては、種を吐き出しています。ガマズミ
の実も「昔の子供」によく食べらた木の実のひとつです。

ガマズミの名前のもとは、「ガマ染め」、「神ツ実」、「鎌柄」、「鎌酸
実」などの説があります。

「ガマ染め」については、かつてはガマズミの類、ことにミヤマガ
マズミの実は、衣類のすり染めに使われたそうです。「神ツ実」は、
神の力が宿るとされるモモの実と関連する説話があるためだとか。

また「鎌柄」は、枝が折れにくいため、鎌などの道具の柄に使用し
たことからの名。「鎌酸実」も鎌の柄に利用される酸っぱい実など。
どの説も確かにもっともです。

果実は、赤く熟すと甘酸っぱくなって食べられます。ことに霜にあ
たるとさらに甘味が増してきます。この実は食べる時、口から種を
吐き出すのが少しめんどうですが、縄文時代の人々は実をはき出さ
ず食べてしまったそうですヨ。そのほか果実酒に利用、見事な朱色
の酒もできます。

私が生まれた千葉県八千代市では子どものころ、竹の筒に入れた実
をシノダケやモロコシの茎でつついてなめて遊びました。「ザック
ザック」という遊びです。塩を少しまぜて味をつけるとおいしいで
す。

樹皮は鎮静剤になり、葉をお茶として利用する地方もあるそうです。
またガマズミを使って(タネが少しじゃまですが)、ドーナツ、ジ
ャム、ケーキに利用したりもします。

また東北地方ではダイコンを漬ける時に色を出すためガマズミをつ
け込んだりするそうです。さらには木の皮を沈静剤や葉をお茶とし
て利用する地方もあったそうです。

このようにガマズミは、野生動物の格好の餌であるとともに、人間
サマにも大昔から食用に道具をつくる材料に、いろいろ利用されて
きた身近な植物。

この植物は日本中どこにもあり、生活に密接に関係した木なので方
言が多く、東北・ジュミ、関東・ヨツズミ、中部・ヨードメ、近畿
・シブレ、中国・カメガラ、四国・九州ではナベトーシなどなど。
全国に231もあるというからただごとではありません。それほど親
しまれた植物なのでしょう。
・スイカズラ科ガマズミ属の落葉低木

▼【データ】
【名前】:方言・ジュミ・ゾーミ(東北地方)、ヨツズミ・ヨツドメ
(関東地方)、ヨーゾメ・ヨードメ(中部地方)、シグレ・シブレ(近
畿地方)、カメガラ(中国地方)、ナベトーシ(四国・九州北部)、
イセビ(九州南部)・果実酒、鎌の柄、杖、輪かんじき、漬け物の
着色料のどに利用され、身近な植物だった。ズミは染めの転化。漢
名の「莢と草冠に迷」と書くケフメイが「カメ」の転化→これとズ
ミ(酢実)が結びつき→カメズミ→カマズミ→ガマズミになった。

【利用】:器具材・鎌の柄・杖・輪かんじき・果実酒・染料。霜が
数回当たってから甘くなる。子どもたちはザックザックをつくって
遊んだ。

【参考】
・「植物の世界・1」(朝日新聞社)1996年(平成8)
・「日本大百科全書・5」(小学館)1985年(昭和60)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

 

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