山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼690号 「山の花・クリンソウ」

【概略】
クリンソウは九輪草。五重の塔の「九輪」のように花が何層にも輪
生して咲いている。思わず数えてみたくなる。「九輪草四、五輪草
でしまひけり」一茶もそうしてみたらしい。7輪くらいまではあっ
たのか七輪草の名もある。
・サクラソウ科サクラソウ属の多年草

▼690号 「山の花・クリンソウ」

【本文】
野草にクリンソウという花があります。日本特産だそうです。日
本産のサクラソウ属の中で一番大きく、まさに王者というほどの
花です。

この花の栽培の歴史は古く、江戸時代初めの「草花絵前集」とい
う本に「色は白、紫、とび入りなどさまざまあり」との記載があ
ります。

しかしよく栽培されているサクラソウのように、いままでに伝わ
るような園芸品種は生まれなかったという。

イギリスのロバート・フォーチュンは江戸時代末、その見聞記「江
戸と北京」のなかで、「目に触れた植物の中で、もっとも心をひか
れた花はクリンソウだった。

豊かな赤紫色のその花は丈がほぼ60センチの茎の上に重なり合っ
てならんでいた。今後、サクラソウの女王の座を占めることは間
違いないだろう」と絶賛しています。

フォーチュンはクリンソウの種子を故国に持ち帰ったらしく、10
年後に出版されたカーチスの「植物図譜」で紹介されているとい
う。

クリンソウの花は深紅色、淡紅色から白花品まで、いろいろな変
異種があるという。クリンソウは漢字で九輪草。五重の塔の一番
上の層の屋根の上にある「九輪」と呼ばれる飾りのように、花が
何層にも輪生しているからだといいます。

花は茎の下部から順に上に咲いていきます。見ていると誰でも何
層あるか数えてみたくなります。しかし九輪まで咲いているのは
そうたくさんあるわけではないそうです。

「九輪草四、五輪草でしまひけり」小林一茶も数えてみたらしい。
7輪くらいまではあったのか七輪草の名もあります。
・サクラソウ科サクラソウ属の多年草。

▼【データ】
【参考】
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
・「世界の植物・2」(朝日新聞社)1976年(昭和51)
・「植物の世界・6」(朝日新聞社)1995年(平成7)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

山旅イラスト【ひとり画展通信】題名一覧へ戻る
………………………………………………………………………………………………
「峠と花と地蔵さんと…」トップページ【戻る】