山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼643号 「富士山・一合目、二合目と数えるわけ」

【概略】
富士山出現伝説のひとつ孝安天皇92年(紀元前301)説。雲霧が飛
んできて穀物を盛ったように集まった。そのため高さを穀物を計る
単位を使い全体を十合に分けた。そして下から一合、二合と数え、
それぞれ地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上・声聞・縁覚・菩薩
・仏の仏の十界を説くという。(「富士山縁起」ほか)

▼643号 「富士山・一合目、二合目と数えるわけ」

【本文】
ヤマ屋と称する人たちにとっては富士山は登山の対象ではないよう
ですが、それでも富士山はほかの山にくらべてダントツに高い山。
いにしえから歌に詠まれ、絵に描かれ、伝説に彩られる日本一の山
なのかも知れません。

その富士山の高さを一合、二合と数えますよね。なんとも不思議な
ことだとは思いませんか。ふつう五合目までクルマで登ってしまい
ますが、いまでも一合目から登れる道はちゃんと残っています。

富士山の出現については孝霊天皇の時代説、雄略天皇時代説などあ
りますが、これもそのひとつの説です。「富士山縁起」(室町時代の
古書の筆写本で、富士宮市村山の浅間神社宝物館に所蔵していた巻
物)によれば、第6代孝安天皇92年というから、「日本書紀」の記
述から西暦になおすと、紀元前301年の6月にあたります。

ある日、富士山が突然あらわれたというのです。初めは雲霞が飛び
来たって、穀物のように聚(あつ)まり、穀物を盛ったような形に
できあがりました。そのため富士山の異名を穀聚山(こくじゅせん)
というのだそうです。

またその高さを計るのは穀物を計る単位を使い、富士山頂の高さを
一斗と見なし、下から一合、二合、三合……と数え、それぞれ地獄
・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上・声聞(しょうもん)・縁覚(え
んがく)・菩薩・仏の十界を説いているのだとか。

そして一、二合は十佳の因果、三、四合は十行の因果、五、六合は
十回向の因果、七、八合は十地の因果、九,十合は等覚位の因果を
あらわしているのだそうです。

なんともむずかしい話に迷い込んでしまいました。なお、富士山の
名前については「天地の富を士(つかさどる)故に富士山と号し、
郡名と作(な)す」のだそうです。

▼富士山頂【データ】
【山名】ふじさん、ふじやま

・【異名、由来】:富士山、不尽、不二、布士、富慈、芙蓉峰(ふよ
うほう)、富岳などの呼び方がある。富士山8合9勺(はちごうき
ゅうしゃく=3360m)からから上、約400万平方mは、徳川家康が
富士山本宮浅間大社に寄進したとの記録があるが、明治維新後国有
地にされていた。

8合目から上の神社の施設のある約16万平方m分は1952年(昭和27)
に大社に譲与されているが、富士山頂が返還されなかったため、大
社側が国を相手取って裁判を起こしました。1974年(昭和49)、最
高裁の判決で大社側の所有が認められた。しかし静岡、山梨の県境
が確定しておらず、登記手続きがとれず(東海財務局)、2004年(平
成16)12月17日、土地の所有権が国から富士山本宮浅間神社に移っ
た。(2004年(平成16)12月18付け朝日新聞から)。

しかし、土地の所有権は認められはしたものの、山頂付近の静岡県
と山梨県の県境はまだ定まっていないという。したがって、土地登
記が出来ずじまい。住所は、もちろん静岡県でもなく山梨県でもな
い。所在地は、日本国富士山無番地なのだそうです。同大社側は「こ
れで所有権の手続きは解決した。県境の問題は県民感情もあり、登
記に向けて時間をかけて解決したい」と話しているという。

【所在地】
・山梨県富士吉田市、山梨県南都留郡鳴沢村と静岡県富士宮市、富
士市、御殿場市・静岡県駿東郡小山町との境だが八合目付近から上
部は富士山本宮浅間大社の「私有地」になっており、境界がはっき
りしていない。富士急行河口湖駅からバス、河口湖口五合目から5
時間30分で富士山頂。山頂剣ヶ峰に電子基準点(3777.39m)と二
等三角点(3775.63m)、白山岳に二等三角点(3756.36m)がある。
火口内に写真測量による標高点(3535m・標石はない)がある。

【ご利益】
・【浅間神社奥宮】:【浅間神社】安産・火災除け:【富士山本宮浅間
大社】五穀豊穣、湧水守護の神

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第72番選定):日本二百名山、日
本三百名山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(第69 番選定)
・山梨県選定「山梨百名山」(第100番選定)

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・山頂剣ヶ峰に電子基準点と三角点、白山岳に三角点、火口内に標
高点がある。
・【剣ヶ峰の電子基準点】(※標高3774.9m)緯度経度:北緯35度21
分38.75秒、東経138度43分38.3秒
・【剣ヶ峰電子基準点のすぐ南の三角点】(標高3775.6m)緯度経度
:北緯35度21分38.26秒、東経138度43分38.52秒
・【白山岳の三角点】(標高3756.4m)緯度経度:北緯35度22分0.02
秒、東経138度43分46.43秒
・【火口内の標高点】(標高3535m)緯度経度:北緯35度21分46.53
秒、東経138度43分53.27秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「富士山(甲府)」。

【参考】
・「世界大百科事典・21」(平凡社)1974年(昭和49)
・「日本山岳風土記・3」(宝文館)1960年(昭和35)
・「富士山縁起」:「山岳宗教史研究叢書・17」(修験道史料集1・東
日本編)五来重編(名著出版)1983年(昭和58)
・「富士の文学」(別所梅之助)「日本山岳風土記・3」(宝文堂)19
60年(昭和35)
・「本朝神社考」(神社考とも)(中巻)林羅山著(「日本庶民生活史
料集成・第26巻」神社縁起(三一書房)1986年(昭和61)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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