山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼628号「野の花・山の花・ナンバンギセル」

【概略】
道ばたに生えているススキの根元に、奇妙な花を見つける。まるで
タツノオトシゴが口をあけたよう。ご存じナンバンギセルだ。形が
いかにも南蛮渡来のタバコのキセル。咲くといふものにはあらぬき
せる草 森田公司。「万葉集」ではオモイグサ(思い草)。
・ハマウツボ科ナンバンギセル属の1年草

▼628号「野の花・山の花・ナンバンギセル」

【本文】
秋の山道を歩きます。ふと道ばたに生えているススキの根元に、ピ
ンクがかった奇妙な花を見つけびっくりします。まるでタツノオト
シゴが口をあけたようです。

ご存じナンバンギセル。ナンバンギセルとはよくぞ名づけたもので
す。その形が、いかにも南蛮渡来のタバコのキセルのようで、とて
も花が咲いているという感じではありません。

この植物は寄生植物で、ススキやヒエ、サトウキビなどのイネ科や
ミョウガ、スゲ属にまに寄生する居候(いそうろう)。寄生性なの
で葉緑素がなく、葉も退化しちゃっています。

道の辺の尾花がしたの思ひ草今さらになど物か思はむ(万葉集)。
花が首を垂れ、思案顔をしているようなのでオモイグサ(思い草)
と、ロマンチックな名前で歌われます。

茎は地面の中にあって、外に出ている長い雁首は花柄だそうです。
ナンバンギセルは薬草だという。強精、強壮、不妊症によいという
のです。

この草をショウチュウに漬けて、冷暗所に1ヶ月置いたものをサカ
ズキに毎日1〜2杯飲むとバッチリだとものの本に書いてありま
す。俳句に「咲くといふものにはあらぬきせる草 森田公司」と詠
まれています。

秋に盆栽に植えたススキの根元にタネをまくと、翌年生えてきて観
賞用として楽しめるそうです。
・ハマウツボ科ナンバンギセル属の1年草

▼【データ】
【参考】
・「植物の世界・2」(朝日新聞社)1994年(平成6)
・「世界の植物・1」(朝日新聞社)1975年(昭和50)
・「日本大百科全書・17」(小学館)1989年(平成1)
・「日本の野草」林弥栄編(山と渓谷社)1983年(昭和58)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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