山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼621号 「山の花・ハクサンフウロ」

【概略】
ハクサンフウロはフウロソウ(風露草)の仲間。針ノ木隧道の上の
鳴沢岳のものは無惨にもつぼみがもぎ取られ、また花びらがむしら
れていた。それでもけなげにその名にふさわしく、露を含みながら
風に吹かれながら咲いていまいるのがいとうしい。
・フウロソウ科フウロソウ属の多年草

▼621号 「山の花・ハクサンフウロ」

【本文】
高山植物のハクサンフウロは、フウロソウ科だという。ふつう植物
の科は代表的な種の名前をつけています。フウロソウは漢字で「風
露草」。なんと趣のある名前ではありませんか。

どんな花かと調べてみました。ゲンノショウコだとするもの、イブ
キフウロだとするもの、ハクサンフウロの別名だとする図鑑もあり
ます。

高山の湿った草原に生えるハクサンフウロは環境で背丈が違い茎や
葉が赤みがかったりします。紅紫色の花の色も濃かったり淡かった
りです。

名前は石川県・岐阜県境の白山に産することからついたという。図
鑑に紹介されるものは白馬岳など花の名所ばかり。でも目立ちませ
んがほかの山にも咲いています。

8月、北アルプス黒部湖への入口扇沢から分かれて針ノ木雪渓を登
りました。たどりついたところは針ノ木峠。昔はここから針ノ木谷
を下りて平ノ渡シにあるところを渡り、富山県へ抜ける馬道があっ
たという。

針ノ木峠は北アルプス後立山連峰が北に向かって始まるところ。今
回は後立山連峰を針ノ木岳、スバリ岳と北上。鳴沢岳を過ぎるころ、
やぶ道にハクサンフウロの花が咲いていました。

しかし、そのまわりに点々と咲いている花は無惨にもつぼみがもぎ
取られたり、花びらがむしられています。花の銀座から離れたあま
り知られない場所でも懸命に咲く花々。

何とはなしにつまんだりむしったりしてしまうのでしょうか。それ
でもけなげに風露草の名にふさわしく、露を含みながら風に吹かれ
ながら咲いていました。

この山の下は黒部湖へ通じる隧道が走りトロリーバスが通っている
ところ。下界の快適な車内とは別の世界の山上の小さな花。なんと
なく感じるところのある登山道でした。
・フウロソウ科フウロソウ属の多年草

▼鳴沢岳【データ】
【所在地】
・富山県中新川郡立山町と長野県大町市との境。大糸線信濃大町駅
の北西17キロ。大糸線信濃大町駅からバス、柏原新道入り口下車、
歩いて7時間で鳴沢岳。写真測量による標高点(2641m・標石はな
い)がある。地形図に山名と標高点の標高の記載あり。標高点より
南西360mに針ノ木隧道(関電トンネル)が通っている。標高点か
ら610mに新越山荘がある。

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【標高点】緯度経度:北緯36度34分07.74秒、東経137度41分43.64


【地図】
・2万5千分の1地形図「黒部湖(高山)」

【参考】
・「世界の植物・4」(朝日新聞社)1975年(昭和50)
・「植物の世界・3」(朝日新聞社)1996年(平成8)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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