とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼616号 「南ア甲斐駒ヶ岳・山頂の祠」

【概略】
甲斐駒山頂には立派な祠があり山麓・2個所の駒ヶ岳神社の奥宮に
なっている。日本神話で出雲の国譲りの時、建御雷神に追われた建
御名方神が諏訪湖まで逃げてきて、甲斐駒ヶ岳を見てただ感動。の
ち、諏訪湖の神になり、あの崇高な山に、父親神である大己貴命を
祭ったのがはじまりという。
・山梨県北杜市伊那市との境

【本文】

 南アルプスの山梨県と長野県境にそびえる甲斐駒ヶ岳(標高296
7m)は、全国各地に数ある駒ヶ岳のなかでも最高峰です。ドッシ
リ構えた雄姿は見事だと評判です。山頂には立派な祠があります。

 祠は駒ケ岳神社の奥宮で、前宮は山梨県北杜市白州町横手と白
州地区の竹宇の2ヶ所にあり、黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳への登山
口になっています。まつってある神は大国主命(おおくにぬしの
みこと)の名でおなじみ大己貴命(おおなむちのみこと・大国主
命)と、少彦名命(すくなひこなのみこと)という神さま。

 突然ですが、日本神話の『古事記』の神代記などに出てくる「出
雲の国譲り」の時、高天原から派遣された建御雷神(たけみかづ
ちのかみ・建御雷之男神)は、十拳剣(とつかのつるぎ)を波頭
にさかさまに立て、その剣先にどっかとあぐらをかいて大己貴命
に国譲りを迫ります。しかし大己貴命の子、建御名方神(たけみ
なかたのかみ)は国譲りには反対です。

 そこで、建御名方神は「力比べで勝負してきめよう」と、怪力
の建御雷神に挑みましたが、建御名方神は、とうとう破れてしま
いました。そして長野県の諏訪湖まで逃げて来て諏訪大社の祭神
になります。

 その時、甲斐駒ケ岳の崇高さにうたれ、父親神(大己貴命・大
国主命)をその山頂に祀ったのが奥宮のはじまりだと、駒ケ岳神
社の社伝にあります。少彦名命があるのは、大・小(少)の対比
から大己貴命とコンビとしてよく祭られているケースです。

 ほかに雄略朝というから大和時代、出雲国の宇迦山から神の座
を移したとする書物もあります。この山も修験道の山。ここは文
化13年というから1816年、延命行者(弘幡行者)が道を拓き、頂
上を極めたという。それにより、修験道信仰の威力大権現もまつ
られています。駒ヶ岳神社も古くは駒形権現とよばれたそうです。

 しかし、それより前の1814年(文化11)に編纂の『甲斐国志』(第
2巻)に「山頂巌窟ノ中ニ駒形権現ヲ安置セル所アリ」との記述
もあり、延命行者はあらたにこの山を開いた行者で、その行場が
各所に残っています。

 1879年(明治12)、地元発行の木版の「甲斐駒ヶ岳之略図」は、
甲斐駒ヶ岳の山頂に大己貴命、摩利支天に手力男命、黒戸山に猿
田彦命が鎮座するとあります。(『角川日本地名大辞典p395』)。こ
んな由緒のある祠も、まわりに大勢の登山者が集まって休憩して
いて、観察するのは難儀です。名山と呼ばれるところは仕方ない
ですね。

▼【データ】
【所在地】
・山梨県北杜市(旧北巨摩郡白州町)と長野県伊那市(旧上伊那郡
長谷村)との境。中央線日野春駅の西14キロ。JR中央本線甲府駅
からバス、広河原乗り換え北沢峠、歩いて4時間20分で甲斐駒ヶ岳。
一等三角点(2965.6m)と、写真測量による標高点(2967m)と、
甲斐駒ヶ岳神社の奥宮がある。地形図上には駒ヶ岳の山名と三角点
の標高、すぐ西に標高点の標高のみ記載。三角点より東方向直線約
95mに鳥居の記号がある。

【ご利益】
・【駒ヶ岳神社奥宮】:病気平癒・家内安全・農耕・豊作・縁結び
(安産・子宝)・福の神

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第77番選定):日本二百名山、日
本三百名山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(第48 番選定)
・山梨県選定「山梨百名山」(第29番選定)
・清水栄一選定「信州百名山」(第92番選定)
・田中澄江選定(1995年)「新・花の百名山」(第75 番選定)

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【標高点】緯度経度:北緯35度45分28.63秒、東経138度14分12.4

・【一等三角点】緯度経度:北緯35度45分28.97秒、東経138度14分1
1.93秒

【基準点閲覧】国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」から検索
・基準点(三角点):(基準点コード:TR15338510901)(点名:甲駒
ケ嶽)(冠字選点番号:記載なし)(種別等級:一等三角点)(成果
状態:正常)(測地系:世界測地系)(緯度経度:緯度 35°45′28.
5229、経度 138°14′12.4807)(標高:2965.58m)(現況状態:正
常 20011010)(所在地:長野県伊那市大字黒河内3211−1)(点
の記図:閲覧可)

【地図】
・2万5千分の1地形図:「甲斐駒ヶ岳(甲府)」。5万分の1地形図
「甲府−市野瀬」

【山行】
・第3日目:1995年(平成7)8月5日(土・快晴)甲斐駒ヶ岳探
訪:1995年(平成7)8月3日(木)〜8月6日(日):「新宿駅・韮
崎駅・竹宇駒ヶ岳神社・横手分岐・黒戸尾根五合目小屋泊・七丈小
屋・甲斐駒ヶ岳・早川尾根小屋泊・広河原・甲府駅・高尾駅」:「南
ア・黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳」野歩路会山行

【参考】
・「裏見寒話」(うらみかんわ)宝暦2年(1752)甲府勤番の士、野
田成方(のだ・しげかた)の著したもの
・「角川日本地名大辞典19・山梨県」磯貝正義ほか編(角川書店)1
984年(昭和59)
・「コンサイス日本山名辞典」(三省堂)1979年(昭和54)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・「日本歴史地名大系・山梨」(平凡社)1995年(平成7)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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