とよだ 時・山旅漫歩゚民俗画
山の伝承【ひとり画通信】

▼611号「山の花・カタクリ」

【前文】
早春に芽を出し紅色の可憐で美しい花を咲かせるカタクリ。漢字で
は片栗。クリの子葉の一片に似ているからだという。花びらの中は、
つけ根に濃い紫色のWの文字が見え、日中はそり返って咲き夕方閉
じる。寿命が短く春芽吹いて花をつけ地上で生きるのはたった2ヶ
月だという。
・ユリ科カタクリ属の多年草

▼611号「山の花・カタクリ」

以前、新聞などでどこどこの山のカタクリの花が咲いたとかなどと
話題になることがありました。カタクリは、まだまわりの草木が枝
葉を茂る前に芽を出し、淡緑色の表面に紫色の斑紋をつけた広い葉
を2枚広げます。

その真ん中から花茎をのばし、うす紫色の花弁をそらせて、何か恥
ずかしげにうつむいて咲いています。花びらの中は、つけ根に濃い
紫色のWの文字が見えます。花は日中はそり返って咲き夕方閉じま
す。

カタクリは種子の発芽から花を咲かせるまで7年間かかるという。
しかし寿命が短く春芽吹いて花をつけ、地上で生きるのはたった2
ヶ月というから、植物のこととはいえ無情を感じます。

カタクリは漢字で片栗。クリの子葉の一片に似ているからだそうで、
以前は漢字の通り片栗粉はカタクリからとったそうです。

しかしこれからとる片栗粉は生産が少なく、いまではゼイタク品。
普通はジャガイモのでんぷんを使っています。でもカタクリからと
るホンモノ片栗粉は老人や子どもの下痢の食養生には効果あるのだ
そうです。

このかれんなカタクリの花は、昔から親しまれていたらしく、元禄
時代に出た『花壇地錦抄』(伊藤伊兵衛・1695年)にも載っていて、
観賞用に庭園に植えていたそうです。

また江戸後期の『草木図譜』(岩崎常正・1830年)や『草木図説』(飯
沼慾斎・1862年)などにも図入りで紹介されています。昔カタクリ
は、カタカゴとかカタコと呼ばれていたという。

カタカゴとは傾いた籠の意味。花を籠にみたてたわけです。片栗粉
は先に書いた下痢の時の滋養料のほか、外用として湿疹などの時の
撤布剤によいという薬草です。以前は日本薬局方に収載されていた
そうです。

カタクリはまた若芽や鱗茎を山菜、野草として料理していたという。
また子どもたちの草花遊びの素材にもなっていたふつうにあった花
だったそうです。

開発、公害、盗掘のつけがまわって、いまでは珍しい植物になり、
柵をつくって保護。自生する山ではパトロールしたり、カタクリ祭
りまでする始末。このまま環境破壊が続けば、そのうちペンペング
サ祭りまでする時代がくるのでしょうか。

【データ】
・ユリ科カタクリ属の多年草

【参考】
・「世界の植物・9」(朝日新聞社)1975年(昭和50)
・「植物の世界・10」(朝日新聞社)1996年(平成8)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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