とよだ 時・山旅漫歩゚民俗画
山の伝承【ひとり画通信】

▼603号「高山植物・タカネナデシコ」

・【前文】
高い山を縦走しているとタカネナデシコが優美な花を咲かせている
のをみかけます。その昔、信濃と飛騨の国境にある峠の巨岩にいつ
しか悪霊がすみつきました。村一番の暴れん坊の太郎は梓の弓を背
負い峠に向かいました。やがて風がやみ、青空が戻ってきました。
村人が峠に行って見ると太郎の放った矢が大岩に根づきナデシコの
花が美しく咲いていたということです。

【本文】は下方にあります。

▼603号「高山植物・タカネナデシコ」

【本文】
高い山を縦走している時、稜線などでよく見かける高山植物にタカ
ネナデシコがあります。大きな真っ赤に咲く花。登山道わきの石礫
地などに優美な花を見つけると疲れた足も休まります。

タカネナデシコはカワラナデシコの高山型。本州中部以北の高山帯
に分布する多年草だという。タカネナデシコについてこんな話が伝
わっています。

その昔、信濃と飛騨の国境に帰らずの峠と呼ばれる所がありました。
この峠の巨岩に、いつしか悪霊がすみつきました。峠は悪霊のうめ
き声と、生臭い風が吹いて村人も気味が悪く、近寄る人もいなくな
りました。

悪霊は次第に里にまで降りきては、何日も雨風を吹き荒れさせ、稲
穂までむしって田畑を荒らしつづけました。村人はほとほと困り果
ててしまいました。

それを聞いた村一番の暴れん坊の太郎は、梓の弓を背負い峠に向か
いました。しばらくすると風が止み、青空が戻ってきました。村人
が峠に行って見ると太郎の放った矢が大岩に根づき、ナデシコの花
が美しく咲いていたということです。

この帰らずの峠というのは、いまでいう北アルプス後立山連峰の「不
帰の嶮」のことなのでしょうか。ぜひ知りたいものです。それとも白馬岳
から欅平側へ下ったところにある不帰岳のあたりにそんな峠があるの
でしょうか。ぜひ知りたいものです。

ちなみにタカネナデシコは、本州中部以北の高山帯の石礫(せきれ
き)地に生える多年草の高山植物。カワラナデシコの変種だそうで
す。

可憐な花を咲かせます。高さは20センチくらいで、花弁は濃紅色で
美しい。タカネナデシコは高嶺撫子で高山に生えるためについた名
前です。

これに似たものに白馬連峰に生えるクモイナデシコ(一名シモフリ
ナデシコ)があります。これは全体に白霜をおび、花の下の包片が
ただ2個であるというのが特徴とか。

クモイナデシコは漢字で雲居撫子。雲が宿る穂で高山に生えるため。
別名のシモフリナデシコは霜降撫子で、白色を帯びた草状からつい
た名前だそうです。

・ナデシコ科ナデシコ属の多年草・カワラナデシコの高山型

▼【データ】
【参考】
・『高山植物 花の伝説』稲田由衣(株式会社ナカザワ)
・『植物と伝説』松田修(明文堂)1935年(昭和10)
・『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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