山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼548号 「中ア木曽駒麦草岳と麦草」

【概略】
木曽駒ヶ岳から西へ少しはずれた麦草岳は静かだ。雪解けがすすむ
と、山の斜面に大蛇の雪形があらわれ、ふもとの上松町の風物詩に
なっている。ハイマツの生えた傾斜地は、春になると緑が鮮やかさ
になりまるで麦草が生えているようなのでその名があるという。
・長野県木曽町と上松町との境

▼548号 「中ア木曽駒麦草岳と麦草」

【本文】
中央アルプス木曽駒ヶ岳から西へ少しはずれた麦草岳は、にぎやか
な木曽駒山頂とくらべて訪れる人もなくウソのように静かです。麦
草岳山頂直下には駒石という岩があり駒石岳の名もあります。

5月ころ雪解けがすすむと、山の斜面に大蛇の雪形があらわれ、農
作業の暦としてふもとの上松町の風物詩になっています。

山頂のハイマツの生えた傾斜地は、春になると緑がいっそう鮮やか
さになるという。下界からみると、その緑がまるで麦草が生えてい
るようなので麦草岳というのだそうです。

ある夏、木曽駒ヶ岳のとなり木曽前岳から山姥の奇岩を経て、麦草
岳に向かいました。お花畑にはわずかな踏み跡がつづいています。
はしごと岩峰を越えて間もなく、開けた山頂に飛び出しました。

広々とした頂は、ひざくらいまでハイマツにおおわれ、山名の由来
も納得です。赤い屋根の祠のわきに寝転がり、しばらく流れる雲を
眺めました。訪れる人は全くありません。

赤い屋根の祠のわきに寝転がり、汗を拭きながら、しばらく流れる
雲を眺めました。ついでながら祠は上松町の駒ヶ岳神社の末社で、
農業、蚕、牛や馬の守護神になっています。国の無形文化財にも指
定されているそうです。

ちなみに1991年(平成3)に国土地理院から発行された「日本の山
岳標高一覧・1003山」には標高は2733m(測定点)になっていまし
たが、2008年(平成20)6月に電子国土ポータルWebシステムで検
索した時には2721.1m(三角点)になっていました。

▼【データ】
【山名・地名】麦草岳(むぎぐさだけ)
・【異名・由来】麦のような雑草が生える草原であることから集落
名(小字)がうまれ、それが山名に転移「日本山岳ルーツ大辞典」。

【所在地】
・長野県木曽郡木曽町(旧木曽郡木曽福島町)と長野県木曽郡上松
町との境。飯田線沢渡駅の西14キロ。JR中央本線上松駅から6時
間で麦草岳。三等三角点(2721.1m)と、上松町の駒ヶ岳神社の末
社の祠がある。地形図上には山名と三角点記号とその標高、それに
駒石の文字の記載あり。付近に何も記載なし。

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【三等三角点】緯度経度:北緯35度47分52.3787秒、東経137度47
分09.9115秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「木曽駒ヶ岳(飯田)」5万分の1地形図「飯
田−赤穂」

【参考】
・「上松町の神社と仏閣」(町誌別編)長野県上松町教育委員会(昭
和60年3月)
・「駒ヶ岳由来記」木曽上松町駒ヶ岳社務所
・「信州山岳百科・2」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「徳原讃岐支配扣」上松町

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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