とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼533号 「北ア・徳本峠の旅人伝説」

【概略】
不思議な話が多い徳本峠。夜、娘が草原で笛を吹いている。吹き終
わったとたんお婆さんになっていた。「キツネの仕業か!」。旅人は
あわてて歩きだした。向こうから別の旅人がやってきた。すれ違い
に旅人の顛を見て、心配そうに声をかけた。「おじいさん、そんな
に急ぐと転びますよ」。

▼533号 「北ア・徳本峠の旅人伝説」

【本文】
北アルプス穂高連峰の展望台の徳本峠。これで「とくごう」と読む
そうです。江戸時代、地元の人は「徳吾」と呼んでいたという。明
治時代、役人が勝手に徳本峠の文字を使って地図をつくってしまい
ました。

しかし地元の人は昔から親しんできた「とくごう」の名前で呼んで
います。お上は仕方なく地図の徳本峠の文字に「とくごう」とカナ
を振ったという。

ところで、この峠は奈良時代からあった長野県旧南安曇郡安曇村新
島々集落から上高地へ通行路だったといいます。こんな古い峠です
から伝説もいろいろ残っています。

その昔、若い旅人が徳本峠をめざしていました。前を若い美しい娘
が歩いています。娘は峠道の角で見えなった。夕日が沈み、月が出
てきました。突然笛の音が聞こえてきます。

あの娘が草原で笛を吹いているのです。美しい音色に旅人は聞きほ
れます。娘は笛を吹き終わったとたんお婆さんになっていました。
「キツネの仕業だ」。

旅人はあわてて歩きはじめました。向こうからほかの旅人がやって
きました。そしてすれ違いに旅人の顛を見て、心配そうに声をかけ
ました。「おじいさん、そんなに急ぐと転びますよ」。

そのほかこの峠への島々谷道には三木秀綱公の奥方と侍女の悲しい
物語も残っています。

・【データ】
【地名】徳本峠(とくごうとうげ)
・【異名・由来】江戸時代上高地の常設杣小屋付近を村人は「徳吾」
と呼んでいた。明治になり、お上が地図をつくった時、徳本峠と記
入。土地の人は不審に思いながら昔から親しんできた「とくごう」
の地名で呼びあった。仕方なくお上は徳本峠に「とくごう」とルビ
をふって読ませた。

【所在地】
・【上高地から徳本峠】・長野県松本市安曇(旧南安曇郡安曇村)。
松本電鉄新島々駅の北東12キロ。松本電鉄新島々駅からバス上高地、
歩いて3時間30分で徳本峠(とくごうとうげ)。峠上に徳本峠小屋
がある。(標高2135m)地形図に峠名(本に「ごう」のルビ)、小屋
名の記載あり。標高数字なし。付近に何も記載なし

【名峠】
・井出孫六選定「日本百峠」(第45番選定)
・郷土出版社版「定本信州百峠」(第58番選定)

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【徳本峠】緯度経度:北緯36度13分41.07秒、東経137度40分41.93


【地図】
・2万5千分の1地形図「上高地(高山)」

【山行】
・第9日目:1995年(平成7)8月26日(土・快晴)徳本峠探訪:
1995年(平成7)8月17日(木)〜8月28日(月)「新宿駅・松本駅・
大糸線信濃大町駅・七倉・烏帽子岳・野口五郎岳・水晶岳・雲ノ平
・高天原(高天ヶ原)・黒部源流・三俣蓮華岳・双六岳・槍ヶ岳・
大天井岳・常念岳・蝶ヶ岳・大滝山・徳本峠・霞沢岳往復・島々集
落・新島々駅・松本駅・新宿駅」:「北アルプス裏銀座烏帽子岳から
表銀座・常念岳・徳本峠・島々谷縦走」単独行

【参考】
・「アルプスの伝説」山田野裡天(ナカザワ)
・「上高地物語」横山篤美(信州の旅社)1981年(昭和56)
・「信州峠百科」井出孫六ほか監修(郷土出版社)1995年(平成7)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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