山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼507号 「房総鴨川市・嶺岡浅間山系白滝山の天狗面」

【概略】
房総の嶺岡山系・ピーク嶺岡浅間には、口のとがった天狗、団子
っ鼻の天狗など変わった天狗面があります。地元ではこのあたり
を石尊山と呼ぶそうです。石尊信仰には丹沢大山と富士山新五合
目小御岳石尊の2通りがあります。昔から大山参りと富士登山は
セットになっていました。ここの石尊さまは両方を意味している
のでしょうか?
・千葉県鴨川市上小原。

▼507号 「房総鴨川市・嶺岡浅間山系白滝山の天狗面」

【本文】
房総の嶺岡(みねおか)山系は、江戸時代から嶺岡牧として幕府
の牧畜の地でした。いまでも嶺岡牧場があります。牧場のなかに
は「日本酪農発祥之地碑」も建っています。

ここ嶺岡山系には里見家の埋蔵金伝説もあります。その中のピー
ク嶺岡浅間は標高336m。その北東に白滝不動の寺域に白滝山があ
ります。ここに変わった天狗面があるといいます。

登山口は鴨川市側の白幡不動。境内から裏山にとりつきます。白
滝不動のお寺裏から100mも登ったあたりに鳥居があり、3基の石
祠の中に珍しい天狗の面がはめ込まれています。口のとがった天
狗、団子っ鼻の天狗など、およそ現代の天狗面とはかけ離れた形。
これを天狗といえるのか?と思われるほど奇妙な面です。

地元の人はこのあたりを石尊山と呼ぶといいます。石尊信仰の総
本山は、丹沢大山石尊大権現と、富士山新五合目の小御岳石尊の
2通りがあり、両方とも修験道と天狗の山。また嶺岡浅間山頂に
ある石尊碑は富士山の小御岳系です。

かつて大山参りと富士登山はセットになっていたといいます。こ
こを嶺岡浅間と呼び、また地元の人が石尊山と呼ぶところから、
ここは富士山と丹沢大山の両山を意味していると思っています。

ただ、千葉県山岳史研究会の内田栄一氏は『房総山岳志』のなか
で、「ここは浅間山の五合目にあたる所から、富士五合目にある小
御岳石尊権現と思われ、同社の祭神が天狗と考えられていた江戸時
代天狗信仰の名残と思われる」としています。

▼【データ】
【所在地】
・千葉県鴨川市上小原。JR外房線安房鴨川駅からバスで主基(す
き)下車、徒歩白滝不動経由1時間15分で天狗面。地形図になに
も記載なし。付近に何も記載なし

【位置】
・【白滝山天狗面】緯度経度:北緯35度06分41.2秒、東経140
度01分42.94秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」か
ら検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「鴨川(大多喜)」(国土地理院「地図閲覧
サービス」から検索)

【参考】
・『房総山岳志』内田栄一(論書房出版)2005年(平成17)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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