山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼496号 「房総・寂光山の笠石」

【概略】
房総丘陵に笠のような岩が台座の岩盤に乗っている笠石がある。台
座の先は数十mの断崖。笠の岩は南北約3.5mくらい、東西約2m
の楕円形で、重さは3から4トン位。笠と台座は同質ですがその間
に岩質の違う石がはさまっています。「古代の石像遺跡か」「宇宙人
の仕業か」。
・千葉県君津市

▼496号 「房総・寂光山の笠石」

【本文】
房総半島、その丘陵のど真ん中の山奥に、笠を広げたような形の大
岩が、別の大きな岩の上に乗っかった岩があります。この奇妙な岩
を「笠石(かさいし)」と呼び、「古代の石像遺跡か」「宇宙人の仕
業か」とハイカーや訪れる観光客たちの間で話題になっています。

笠石は台座のような岩盤に、巨大な笠をかぶせたようになっていて、
台座の先は落差数十mの断崖。笠になっている岩は南北約3.5mく
らい、東西約2mほどの楕円形で、重さは3から4トン位。

表面はでこぼこしているが裏側は平らになっています。笠の形の岩
は硬く、台座と同じ岩質らしい。笠と台座の間はレンガくらいの石
が4、5個はさまれていて、そのすき間から向こう側をすかし見で
きます。

しかし、はさまれた石は笠石や台座と岩質が違っているから不思議
です。このあたりは地元の人たちが共同所有者になっている「入会
地」になっています。

この笠石についてはこんな伝説があります。「……その昔、村の若
い衆がいたずら半分に笠石を断崖から落としてしまった。しかし、
翌日年寄りたちがおそるおそる山に登ってみると不思議にも、笠石
はもと通りになっていたという」。

その落とされた方向については、いまの豊英(とよふさ)ダムのあ
る側とする説と、反対の絶壁下とする二つの説があり、豊英集落側
では鬼が、反対側では天狗が一夜で岩を乗せたとといっています。

ところで、笠石のまわりの山々を地図で確かめると、北側にある上
総富士(かずさふじ・285m)と南側の嶺岡浅間(みねおかせんげ
ん・336m)を線で結び、さらに東側の元清澄山(もときよすみや
ま・344m)と西側の高宕山(たかごやま・315m)を結び、また北
東の大塚山(280m)と南西の愛宕山(あたごやま・402m)を結ぶ
と、笠石は見事にその交差点にのっています。

さらに、大塚山・笠石・愛宕山を結ぶ線の延長上に、房総を開いた
天富命(あめのとみのみこと)が創建したされる、かつて安房国(あ
わのくに)一の宮だった安房神社に達します。こんなことから、古
代信仰の方位学に関係しているともいわれます。

現場は木更津市方面から国道410号線を鴨川市に向かい、三島大橋、
旅名橋を渡り、フルーツ村の看板のあるところを左折。商店の付近
に駐車。

坂道を歩き出し尾根道に出て樹間の山道をしばらく歩くと突然しめ
縄を張った笠石が出現し驚かされます。岩を登り笠の部分にさわり
たくなりますが、くれぐれも不安定な笠の岩には乗らないよう、注
意が必要だと思いますよ。オネエサマ方。

・【データ】
【所在地】
・千葉県君津市。JR内房線木更津駅からバス、旅名から50分で寂
光不動。写真測量による標高点(246m)がある。地形図に寂光不
動とのみ記載。付近に何も記載なし。

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【標高点】緯度経度:北緯35度11分34.82秒、東経140度01分49.32


【地図】
・2万5千分の1地形図「坂畑(大多喜)」

【参考】
・「角川日本地名大辞典12・千葉」川村優ほか編(角川書店)1984
年(昭和59)
・「日本歴史地名大系12・千葉県の地名」(平凡社)1996年(平成8)
・『プレイボーイ』
・『朝日新聞』切り抜きあり

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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