とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼483号 「長野修那羅峠の女性天狗像」

【概略】
修那羅峠の石仏群の中にこれはめずらしい女性の天狗像がある。し
かも天狗の狗が「佝」と人偏になっている。女性天狗というのは天
狗の種類、階級などどこにも出てこない天狗。石工の案か注文者の
指示か、不思議な天狗として、研究家も首をひねっている。
・長野県筑北村と青木村との境

▼483号 「長野修那羅峠の女性天狗像」

【本文】
石仏といえば長野県の修那羅峠は、奇抜な形、その多さで有名です。
山頂近くに安宮神社があって、裏山の細い道に沿って一列にズラッ
と500体もの石神や石仏がならんでいます。

石仏はどれも作者不明で、江戸時代末期から明治にかけて彫られた
ものといわれています。

その中でこれはめずらしい女性の天狗の石仏があります。石像は半
分はだかで、一見童子風で鼻も高くなく、天狗の形はしていません。
ただ像の両脇に「婆羅門 女天佝」とあり、天狗の狗がケモノヘン
ではなく、「佝」とニンベンになっています。

狗については、富士行者の身禄文字ではニンベンに狗をつけた文字
で、また国安普明文字では「立ヘンに句」を使っているといいます。

もっと不思議なのは、婆羅門の文字。先人がインドの仏典には「天
狗ノ文(もん)見エズ」とはっきり言っているところ。まして戒行
厳しい婆羅門において女性とは。

そもそも天狗の名前は、中国の呼び方は別にしても、日本でも天狗、
天狐と書き、どちらもアマツキツネとも読まれ、『旧事本紀(くじ
ほんぎ)』にある素左男命の吐瀉物から化ったという天逆姫(あま
のざこひめ)、その子の天逆雄神などの深悪神から、天公(てんぐ)、
狗賓(ぐひん)、天伯、天縛などの異名があります。

また天狗の階級をあらわす呼び方には大天狗、中天狗、木の葉天狗、
カラス天狗、白狼(ハクロウ)、狂言に出てくる溝越し天狗など多
彩です。

さらに地方での呼び方があります。宮天狗、海天狗、川天狗、道天
狗、辻天狗、向こうの天狗、屋根の天狗、座の天狗、富士天狗、辰
巳天狗、朝日天狗、夕日天狗、平松天狗、てろう天狗などは、長野
県下伊那郡天龍村神原、南信濃村遠山、木沢の天狗祭りの唱文に出
てくる名前。

また和歌山県には土天狗、土佐にはシバテン(芝天狗)、出羽地方
の最上川には水天狗などなどがありますが、女天狗というのはどこ
にも出てきません。像を彫った石工の案か注文者の指示か、不思議
な天狗として研究家も首をひねっています。

・【データ】
【山名】・しょならとうげ、しゅならとうげ
・【異名、由来】:などの説がある。
修那羅峠・シュ・ショ・シュウは湿原のこと、山麓に湿原のある山
の峠(「日本山岳ルーツ大辞典」)

【所在地】
・長野県東筑摩郡筑北村(旧東筑摩郡坂井村)と小県郡長野県青木
村との堺。長野新幹線上田駅からバス四方下車15分で修那羅山。地
形図に地名「修那羅峠・しゅならのルビ」のみ記載あり。峠より北
西方503mに安宮神社がある。

【ご利益】安宮神社
・五穀豊穣祈願・家内安全祈願・交通安全祈願・就職祈願・方位除
け・子授け祈顧・養蚕祈願・病気平癒祈願・商売繁昌祈・災難祈除
・虫加持(虫封じ)・鼠除け祈願・安産祈願・就学祈願・金神除け
・命名

【位置】
・【修那羅峠】緯度経度:北緯36度24分15.77秒、東経138度06分04.
46秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「信濃西条(長野)」

【山行】
・第1日目:1990年(平成2)4月15日(日・くもり)修那羅峠探訪
:1990年(平成2)4月15日(日)〜16日(月)「上野駅・高崎駅・上田
駅・修那羅山(修那羅峠)・冠着駅・姨捨山(冠着山)・一本松峠・
姥捨駅・霊諍山・大雲寺・屋代駅・高崎駅・上野駅」:「長野県修那
羅山から姨捨山・霊諍山石仏めぐり山行時探訪」単独行

【参考】
・『信州の石仏』(文一総合出版)1980年(昭和55)
・『図聚天狗列伝・東日本編』知切光歳(三樹書房)1977年(昭和5
2)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)
・パンフ「安宮神社縁起」(安宮神社)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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