山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼479号 「北ア・五龍岳のクマ」

【概略】
五龍岳への縦走路、北尾根の頭あたりを登りきると突然ガサガサと
いう物音。稜線の下を黒部川に向かってハイマツのなかを逃げてい
く黒い動物。自分の住処に勝手に入ってくる人の気配にいち早く身
を隠すクマ。われわれも、少しは遠慮しながら歩かなければ。
・長野県大町市と富山県黒部市との境

▼479号 「北ア・五龍岳のクマ」

【本文】
北アルプス・後立山連峰の五龍岳は、断崖絶壁の山。麓の村人は雪
も着かないような岩壁を菱(りょう)と呼びます。これは当時の支
配者武田信玄の家紋と似ており「ご稜」と呼ばれていたそうです。

明治も41年(1908年)の7月、三枝威之介一行が白馬岳から縦走し
てきてこの山にさしかかりました。地元の案内人にこの山はなんと
いう山かね」と聞くと「ゴリョウ」という山だとの説明。

漢字を聞いても分かりません。そこで「五龍」と当て字して雑誌に
発表。のちの地形図に記載され、とうとう「五龍岳」が本名になっ
てしまったということです。

山名についてはその他、信仰の山として賑わった立山側から見てう
しろにあるので、後ろ立山、つまり「五立山」説などあります。

最近は登山道に熊のフンがやたらと目につきます。鹿島槍ヶ岳から
五龍岳に向かう縦走路の北尾根の頭(2560m)あたり、小ピークを
登りきると突然ガサガサという物音。

稜線の下を黒部川に向かってハイマツのなかを黒い動物が逃げてい
きます。クマです。クマは自分の住処でありながら勝手に入ってく
る人の気配にいち早く身を隠す住人。

われわれも、少しは遠慮しながら歩かなければと思ったものでした。

▼【データ】
【所在地】
・長野県大町市と富山県黒部市宇奈月町旧地区(旧下新川郡宇奈月
町)との境。大糸線神城駅の西8キロ。JR大糸線神城駅からテレ
キャビンを利用歩いて10時間20分で北尾根の頭。写真測量による標
高点(2560m)。そのほか付近に何もなし。地形図上には標高点の
標高のみ記載。標高点より北方向直線約197mに赤抜地点がある。

【位置】
・【標高点】緯度経度:北緯36度38分47.41秒、東経137度45分
20.75秒(誤差あり)(国土地理院「地図閲覧サービス」から検索)

【地図】
2万5千分の1地形図「神城(高山)」と「十字峡(高山)」(2図葉名
と重なる)。5万分の1地形図「大町−高山」

【参考】
・「角川日本地名大辞典20・長野県」(角川書店)1991年(平成3)
・「富山県山名録」橋本廣ほか(桂書房)2001年(平成13)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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