とよた 時・山のゆ-もぁ-と(イラスト)
山旅漫歩゚
【ひとり画通信】

▼467号 「山の花・タカネスミレと卵」

【概略】
越中の商人二六が信州へ出かける途中雪の山中で道に迷った。そこ
で光る暖かい卵を見つけだいて寝た。しかし卵は授かるはずの二六
の子供だった。すでに力がなくなっており土に埋めた。夏そこにタ
カネスミレの花が咲いていた。二六は嫁さんをもらったがとうとう
子供は授からなかった。
・スミレ科スミレ属の多年草

▼467号 「山の花・タカネスミレと卵」

【本文】
7月から8月、高い山の角張った石ころなどの間に、黄色いスミレ
の花が咲いています。タカネスミレの花です。石の間から花や葉を
出していますが茎が以外に長く草の丈10センチでかれんな花です。
そのタカネスミレの伝説です。

むかし、越中に二六(にろく)という、商人がいました。二六は間
近に正月をひかえ、塩ざけをかごにいっぱいに背負い、信州に売り
に出かけました。

ところが、その年は雪が多く街道の目印にも見つからず、山中で道
に迷ってしまいました。夕闇もせまり雪の中で体も冷えてきます。
途方にくれていると、ふと遠くに光るものがあります。

近づいてみると、それは小さな卵でした。手にとると不思議なこと
に体が暖まってきます。その夜は雪の中に穴を掘り、卵をだいて寝
ました。

真夜中、二六は夢のなかで不思議な声を聞きました。「おとう、オ
イラはこの世で、おとうが授かるはずのおとうの子供だ。けんど、
それもこうしておとうを暖めたら、もうこの世に出ていく力がねえ。
どうかオイラを地面に埋めてくれ…」。

こうして命を助けられた二六は翌朝、夢の声のとおり卵を土に埋め、
信州に向かい、無事商いを終えることができました。

その夏、卵を埋めたところに一本のタカネスミレの花が風にゆれて
いました。二六は深く頭をたれました。自分の子供となるべき命の
種が可憐な野草の姿になっているのだ。

その後、二六は嫁さんをもらいましたがとうとう子供は授かりませ
んでした。あのスミレがただひとりの子供だったのでした。
・スミレ科スミレ属の多年草

【参考】
・「高山植物 花の伝説」稲田由衣(株式会社ナカザワ)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
・「高山植物」(野外ハンドブック・8)小野幹雄ほか(山と渓谷社)
1985年(昭和60)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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