とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼455号 「高山植物・ウサギギクと神さま」

【概略】
ある時神さまが汚い姿をして森の動物たちの心を試しにやってきま
した。なにもあげるものがないウサギは自分の体をご馳走にして下
さいと火の中に飛び込みました。神さまはウサギを抱き上げ月の世
界へ。そしてごほうびにウサギギクの葉のような長くてさとい耳を
くれたということです。
・キク科ウサギギク属の多年草

▼455号 「高山植物・ウサギギクと神さま」

【本文】
夏山の湿った草地、高山植物の花のなかにひときわ目立つあざやか
な黄色いウサギギクが咲いています。雪がとけるとともに伸び始め
る一対の長い葉が、ウサギの耳に見えるというのでついた名前だそ
うです。

この花は富山県の立山や北陸の白山のものが昔から有名で、江戸末
期の『草木図説』(1862・文久2年、飯沼慾斎著)にはキングルマ
の名で載っています。

黄色い花が車の形になっているところから、「金車」といったよう
です。茎は20〜30センチで直立。根元から生える葉や花茎の下の葉
は対になって生え、6〜12センチのサジ形をしています。

ウサギギクは夏、7〜8月、葉の頂に4〜5センチの頭花を咲かせ
ます。花は外側に一列の雌性の舌状花があり、内側に両性の筒状花
があり中心に固まっています。

おしべは暗紫色、めしべの枝は鈍頭で多少毛が生えています。満開
になると美しいので鉢植えにして観賞もされます。本州中部以北、
北海道に分布しています。

ところでウサギギクにはこんな民話があります。ある時神さまが汚
い姿をして森の動物たちの心を試しにやってきました。リスは倉庫
からクルミやクリを差し出しました。

そして猿は木の洞(うろ)から猿酒を、カワウソは川の魚を、キツ
ネは鶏小屋から黙って戴いた卵を出しました。しかしウサギはなに
もあげるものがありません。

そこでウサギは自分の体をご馳走にして下さいと火の中に飛び込み
ました。神さまはウサギを抱き上げ月の世界へ連れて行きました。

そしてごほうびにその子孫たちにも早く走れる足と、ウサギギクの葉
のような長くてよく聞こえる耳をくれたということです。
・キク科ウサギギク属の多年草

【参考】
・「植物の世界・1」(朝日新聞社)1996年(平成8)
・「花の神話と詩」石井由紀(株式会社ナカザワ)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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