とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼452号 「高山植物・ウスユキソウと花嫁」

【概略】
嫁ぐことに決まった美しい娘。父は貧しく、わが娘に持たせるもの
がなにもない。せめてものはなむけに歌を歌って送り出した。する
と綿雪のような花びらが娘に降りかかり白い衣装に変わっていっ
た。娘はその衣装を着て嫁いでいった。その花はウスユキソウだっ
た。
・キク科ウスユキソウ属の多年草

▼452号「高山植物・ウスユキソウと花嫁」

【本文】
草全体が灰白色のわた毛でつつまれ、まるで薄い雪をかぶったよう
にみえるその名もウスユキソウ。昔、飛騨(岐阜県)に貧しい父娘
が住んでいました。

父は小作(他人の土地を借りて耕作し、その代わり小作料を支払う)
でしたので、いくら働いても暮らしは楽になりませんでした。しか
し娘は美しくまた気品のある女の子でした。

年頃になるとさらに美しくなり、あちこちから縁談の話が寄せられ
ました。娘はとうとう庄屋さんに嫁ぐことになり日取りも決まりま
した。

貧しい父はかわいい娘に何か持たせてやろうとしましたが、貧しく
何もありません。そこで父はせめてもの花むけに歌を歌って送り出
そうと考えました。

いよいよ嫁ぐ日が来ました。父親の祝い歌のなか、娘が乗った馬が
出発しました。父親が歌い出しました。すると父の口から出る歌声
が、次々にわた雪のような花びらになって娘に降りかかり白い衣装
にかわっていきました。

美しい花嫁はその衣装を着て馬にゆられて嫁いで行きました。娘を
思う父親の気持ちから、その花は「高貴な白い花」と呼ばれたとい
うことです。

江戸時代後期(1856・安政3年)の植物図鑑『草木図説』(飯沼慾
斎著)にも、白綿毛を薄雪にみたて、ウスユキソウと出ています。

ウスユキソウは低山帯の乾いた草原や礫(れき)地や岩の割れ目に生
える多年草です。茎は群がって生え、高さ25〜50センチ。葉っぱ
は4〜5センチで、表面が緑色で綿毛が少し生えています。しかし
裏面には密生して銀灰白色になって見えます。

7、8月ごろ、茎の先に、表裏ともに白綿をかぶった 苞葉(ほう
よう)が放射状に数個生えてきて、白い花びらのように見えます。
この中に灰白色の小さな花が寄り集まってつきます。

この花の外側に雌花、中心に雄花があり、冠毛が元の方で環のよう
につながっています。これらがウスユキソウの特徴なのだそうです。
両性花と雌性花があり株が別。

ウスユキソウは、ウスユキソウ属の中でもウスユキソウ亜属。ウス
ユキソウ節と、生粋の「家系」だそうです。根茎は横に伸びて太く
大きく成長し、木のようになり、年輪までつくるといいます。

この高山にあるのがミネウスユキソウで、風雪に耐えるため全体が
小さく、茎の高さ10センチくらい。名前は峰に生えるという意味
だとか。

ヨーロッパアルプスの星・エーデルワイスによく似た花として有名
なミヤマ(深山)ウスユキソウもこの仲間だそうです。

東北の山に生え、1888年(明治21)年フランスの宣教師ウルバン
・フォリーが山形県の鳥海山で採集し、それに基づきウィーン博物
館のハンデルマゼッチが新種にしたという。岩手県早池峰山に生え
るハヤチネウスユキソウも有名です。

エーデルワイス咲き散るこゝが分水嶺(吉田北舟子)
・キク科ウスユキソウ属の多年草

【参考文献】
・「高山植物 花の伝説」稲田由衣(株式会社ナカザワ)
・「植物の世界1巻・3号」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1994年
(平成6)
・「世界の植物巻1・2号」(朝日新聞社)1975年(昭和50)
・「日本大歳時記・夏」水原秋櫻子ほか監修(講談社)1989年(昭
和64・平成1)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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