とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼447号 「高山植物・木曽御嶽・お駒とコマクサ」

【概略】
お駒という孝行娘が、母の病気を治すために木曽御嶽山へ祈願に出
かけました。その夜、お駒は不思議な花の夢を見ました。頂上に登
ると夢に見た花が咲いていました。お駒は、その花を摘んで、母に
花の汁を飲ませると病気が見る見る治ってしまったという。村人は
その話を聞き、いつしかその花を「お駒草」と呼ぶようになったと
いう。
・長野県王滝村と木曽町との境

▼447号 「高山植物・木曽御嶽・お駒とコマクサ」

高山植物のコマクサは、木曽御嶽山と切っても切れない関係にあり
ます。コマクサは木曽御嶽山では薬草で「お駒草」とも呼ばれ、か
つては霊薬「お百草」の原料にされ、大事にされました。それには
こんな話が伝わっています。

昔、信州に母娘が住んでいました。ある冬、母親のお市は原因不明
の病気に取りつかれ、床に伏すようになりました。親孝行の娘のお
駒は、母の難病を治すため、木曽御嶽神社に祈願に出かける決心を
しました。

お駒は、御嶽山に登る途中、不思議な花の夢を見ました。そして花
の汁を母親に飲ませなさいという神さまのお告げがありました。頂
上に登ると、夢で見た花が咲いているではありませんか。

お駒は、神さまのお告げ通り、その花を摘んで帰り、花の汁を母親
に飲ませました。すると、病気は見る見るうちに治ってしまったと
いう。村人はその話を聞き、いつしかその花を「お駒草」と呼ぶよ
うになったという。

また別に話では、お駒の不思議な夢のなかで、母親お市の床にピン
クの花がはらはらと降り、やがて母親は立ち上がりその花の中に消
えていった、とするものもあります。そのほか母娘の名前が入れ替
わり母親がお駒で、娘がお市になっているものもあります。

私の祖母は御嶽教の信奉者で、よく木曾御嶽山に登りました。その
たびに「お百草」を買ってきたものでした。子どものころ、お腹が
痛いと言えばすぐお百草、歯が痛いと言えば、すぐお百草を持ち出
してきます。真っ黒で堅い塊を削って飲まされるこの薬、胃腸がひ
っくり返るような苦さです。「良薬は口に苦し」などとお説教を聞
かされながら逃げまわったものでした。

こんなコマクサの原料も乱獲されたせいか、絶滅寸前になり採集は
禁止になっています。いまでは「お百草」の原料には代用品の「キ
ハダ」を使っているそうです。コマクサはケシ科コマクサ属の多年
草。

駒草に石なだれ山匂ひ立つ(河東碧梧桐)。駒草や朝しばらくは尾
根はれて(望月たかし)。霧よせて駒草紅を失したり(河合薫泉)
などの俳句もあります。

▼コマクサ【データ】
・科属:コマクサはケシ科コマクサ属の多年草。
・花期:7月〜8月
・花言葉:高嶺の花(NHKステラ)
・誕生花::7月28日の誕生花

【参考】
・「高山植物・花の伝説」稲田由衣(株式会社ナカザワ)
・『続・植物と神話』近藤米吉編著(雪華社)1976年(昭和51)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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