とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼435号 「北ア・槍ヶ岳の家族たち」

【概略】
北アルプスの槍ヶ岳は大家族。山頂の大きな穂先を大槍と呼んでい
ます。その北西の突起は小槍で、さらに孫槍、曾孫槍があります。
さらに叔父に当たる鹿島槍ヶ岳、蝶槍、白馬鑓(槍)ヶ岳など、山
名由来の親戚まで入れるとそれこそ大一親族になっています。
・長野県大町市、松本市と岐阜県高山市との境(ただし山頂は長野
県)。

▼435号 「北ア・槍ヶ岳の家族たち」

【本文】
文字どおり、天を突くような北アルプスの槍ヶ岳(3180m)はあま
りにも有名で、いつも登山者の人気の的です。山の名前はやはり穂
先の形からきています。毎年、夏山シーズンになると、押すな押す
なの行列が続き、きまって山頂の祠をバックにカメラにおさまりま
す。

初登頂は播隆(ばんりゅう)上人という江戸後期の念仏僧だという。
1828(文政11)年の夏、銅製の阿弥陀如来、観世音菩薩(観音さま)、
木造の文殊菩薩の3体の仏像を背負って登ったという。それがいま
ある山頂の祠のはじめです。

この槍ヶ岳は、江戸時代、明治、大正にかけては「鑓ヶ岳」とか「鎗
ヶ岳」書かれていたという。漢和辞典を引くとなるほど、「鑓」も
「槍」も「鎗」もみんな「やり」だとあります。

しかし、明治から大正時代の教育学者であり、植物学者・信濃山岳
会副会長だった河野齢蔵という人が、「鎗の字には武器のヤリとい
う意義はない。鎗は全然別の意義なので、この山には槍の字を使う
べきだ」と主張。それからは「槍」の字だけが使われるようになっ
たということです(『信州山岳百科・1』)。

山頂が槍のようにとがっている山は各地にあります。そんな山々を、
鹿島槍ヶ岳、白馬鑓(槍)ヶ岳、蝶槍などと、その地方の地名をつ
けて呼んでいます。みんな槍ヶ岳にちなんだ名前です。

たしかに槍ヶ岳の天を突く独特な形は印象的です。どんな遠くの山
から見てもひと目で分かります。よく各地の山で「あ、槍だ」と指
をさす登山者の姿を見かけます。ところで、この槍ヶ岳は、大家族
なのだそうです。大きな穂先は大槍と呼ばれています。

その北西にある突起は小槍です。歌にも「小槍のうーえでアルペン
おどりをさァおどりましょ…」とあるところ。しかも孫槍、曾孫槍
とつづいているのはあまり知られていません。さらにほかの地名の
ついた○○槍ヶ岳の名がある山も多い。

これらの叔父さん叔母さんまで入れたら親族の数はどのくらいにな
るのでしょうか。山名は穂先の形によるのだそうです。この山の高
山蝶、その名もヤリガタケシジミが槍沢で見られます。

▼槍ヶ岳【データ】
【山名・地名】やりがたけ
・【異名、由来】:穂先の形による

【所在地】
・長野県大町市、長野県松本市安曇(旧南安曇郡安曇村)と岐阜県
高山市上宝町(旧同県吉城郡上宝村)との境(ただし標高点は長野
県)。篠ノ井線松本駅の北西35キロ。松本電鉄新島々駅からバス、
上高地から歩いて延べ10時間半で槍ヶ岳。写真測量による標高点(3
180m)。(二等三角点は亡失・地形図には記載なし)。地形図に山名
と標高点の標高のみ記載。

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第54番選定):日本二百名山、日本
三百名山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(第58番選定)
・清水栄一選定「信州百名山」(第68 番選定)
・田中澄江選定(1981年)「花の百名山」(選定・トウヤクリンド
ウ)
・田中澄江選定(1995年)「新・花の百名山」(選定外)

【位置】
・【標高点】緯度経度:北緯36度20分31.08秒、東経137度38分51.4
秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

・【二等三角点】:二等三角点は亡失・地形図に記載なし。(電子国
土ポータルWebシステムから検索)

【基準点の詳細】
・基準点(三角点):(基準点コード TR25437450201)(点名:鎗ケ
岳)(冠字選点番号 波 13)(種別等級:二等三角点)(成果状態
:成果状態 停止【亡失】)(測地系:項目なし)(緯度経度:項目な
し)(標高:項目なし)(現況状態:項目なし)(所在地:項目なし)
(点の記図:項目なし)。(国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」
から検索)

【点の記】
・閲覧不能

【地図】
・2万5千分の1地形図「槍ヶ岳(高山)」。5万分の1地形図「高
山−槍ヶ岳」

【山行】
・1985年(昭和60)4月29日(月・快晴)槍ヶ岳探訪:1985年(昭
和60)4月25日(木)〜29日(月)「新宿駅・信濃大町・七倉・千天出
合・北鎌尾根・槍ヶ岳・横尾・徳沢・上高地・松本駅・新宿駅」北
鎌尾根縦走

【参考】
・「信州山岳百科・1」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・「信州鎗嶽畧縁起」(「鎗嶽畧縁起」)(祐泉寺本):「山岳宗教史研
究叢書・17」(修験道史料集1・東日本編)五来重編(名著出版)1
983年(昭和58)
・「日本山岳風土記・1」(宝文館)1960年(昭和35)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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