とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼419号「和歌山・高野山と弘法大師」

・【概略】
霊場を開くため聖地を求めていた弘法大師。その前に猟師姿の狩場
明神(高野山の神)があらわれ、いまの高野の地を教え黒白2匹の
犬に案内させたてという伝説がある。大師と神がはじめて出会った
所が奈良県五条市だといい、転法法輪寺境内には狩場明神がまつら
れている。
・和歌山県五條市

▼419号「和歌山・高野山と弘法大師」

【本文】
弘法大師空海が開いたとされる聖地高野山。真言宗の根本道場とし
て、総本山金剛峰寺(こんごうぶじ)を中心に聖地が広がっていま
す。この高野山には高林坊(こうりんぼう)という天狗がいること
になっています。高林坊の本体は空海を聖地に導いた高野山の神の
狩場明神(かりばみょうじん)ではないかと、天狗研究家はいって
います。


狩場明神は、丹生明神(にうみょうじん)を母とする御子神だとさ
れ、母神といっしょに祭られることが多い。ここ奈良県五条市のJ
R和歌山線大和二見駅(やまとふたみえき)南西にある犬飼山転法
法輪寺(いぬがいさんてんぽうりんじ)境内にも狩場明神社があり
ます。この場所が弘法大師と狩場明神がはじめて出会った問題の所
とされています。


伝説によると、平安時代初期の815(弘仁6)年、聖地をさがして
諸国を歩いていた弘法大師が山中で狩場明神と出会い、明神の使者
である黒白2匹の犬の先導で、無事高野山にたどりついたという。


その黒白2匹の犬は、転法輪寺の狛犬として鳥居のそばに建立され、
犬をつれた明神の画像は金剛峰寺や京都東寺にも収蔵されていま
す。


しかし「今昔物語」巻十一第二十五では「弘仁七年トイウ年ノ六月
……一人の猟師ニ会イヌ。大小の黒キ犬ヲ具セリ」とあり、年も一
年遅く、連れていたのは黒い大小の犬だという。百科事典でも説明
と図版ではかなり混乱が生じているところです。

でも、そこはソレ、遠ーい昔のこと、あまり気にしないでいきたい
ものです。大和二見駅は和歌山線の小さな駅。座布団をつけたベン
チにザックを置き、転法輪寺に向かいました。りっぱな狩場明神の
社が合祀されています。


ここは本尊を空海、祭神をは丹生明神、狩場明神としています。犬
飼山遍照院といい、高野山真言宗、俗に犬飼寺ともいわれています。
寺宝には室町時代作の空海画像、狩場明神画像があります。


寺記によれば、弘仁7年(816)空海の創設で「狩場明神に御立会
の霊域也」とみえ、空海が南山犬飼(狩場明神)の引率する白黒二
匹の先導により高野山を開いたと伝え、社殿前には犬の足跡が残る
という石もあります。


なるほど、石には犬のあしあととおぼしきへこみが残っています。
社務所に弘法大師との出会いのシーンの絵が飾ってあります。しか
し長年の日光に焼けて白茶けています。明神社の前にかしずく白黒
2匹の犬。静かな静かな境内…。伝説などものの数に入っていない
ようでした。

▼【データ】
【所在地】
・奈良県五條市犬飼町124。JR和歌山線大和二見駅から歩いて30
分で犬飼山転法輪寺。地形図に寺院記号と犬飼町の文字のみ記載。
寺より北西方275mにJR和歌山線が走る

【位置】
・転法輪寺:【緯度経度】北緯34度20分21.57秒、東経135度40
分37.35秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検
索)
【地図】
・2万5千分の1地形図「五條(和歌山)」(国土地理院「地図閲覧
サービス」から検索)

【山行】
・1995年(平成7)4月9日(日・くもり):1995年(平成7)4
月4日(火)〜4月10日(月)「東京駅・名古屋駅・亀山駅・王子
駅・御所駅・一言主神社・蜘蛛窟・高天彦神社・金剛山・北宇智駅
・吉野口駅・吉野駅・金峰神社・青根ヶ峰・山上ヶ岳・洞川・茅原
吉祥草寺・下市口駅・玉手駅・吉祥草寺・大和二見駅・丹生狩場明
神社・五所駅・王子駅・亀山駅(乗り換え)・名古屋駅・東京駅」
単独縦走

【参考】
・「今昔物語」巻第十一(弘法大師始建高野山語第二十五):日本古
典文学全集24「今昔物語」(1)校注・訳:馬淵和夫ほか(小学館
刊)1993年(平成5)
・「山岳宗教史研究叢書3・高野山と真言密教の研究」五木重編(名
著出版)1976年(昭和51)
・『図聚天狗列伝・西日本編』知切光歳著(三樹書房)1977年(昭和
52)
・「日本大百科全書・5」(小学館)1985年(昭和60)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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