とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼409号「北信・姨捨山と今昔物語」

・【前文】
『大和物語』や『今昔物語』にでてくる姨捨伝説は有名です。しか
し姨捨山というのは別名で、正式には冠着山というそうです。山頂
広場に冠着神社がある。神社裏にある石の祠は冠着山権現をまつっ
てあります。ここは天手力男命(たぢからおのみこと)が、天の岩
戸を背負ってやってきて、ずれた冠を着けなおしたところだという。

・長野県千曲市と筑北村との境。

▼409号 「北信・姨捨山と今昔物語」

【本文】
長野県内JR篠ノ井線冠着駅の近くに姨捨(おばすて、うばすて)
山という山があります。この山は姨捨伝説の舞台になっているとこ
ろ。「信濃の国更級(さらしな)という所に、男すみけり……」『大
和物語』の姨捨(おばすて)伝説は、親代わりの老いたおばを捨て
てくるようにと、腹黒い嫁にせめられた夫が、一度はおばを山にお
き去りにしてはみましたが、思いあまって連れもどすという話です。

『今昔物語』にも「今昔(いまはむかし)、信濃ノ国更科(さらし
な)ト云フ所ニ住ム者有ケリ。年老(としおい)タリケル姨母(を
ば)ヲ家ニ居(す)ヘテ、祖(おや)ノ如クシテ養(やしなひ)テ、
年来相副(としごろあひそひ)テ過(すぐ)シケルニ………。

婦(よめ)ハ弥(いよい)ヨ此ヲ厭(いとひ)テ…夫(をうと)ニ、
「此(こ)ノ姨母(をば)ノ心ノ極(きはめ)テ(外字・立心偏+
悪・にく)キニ、深キ山ニ将行(いてゆき)テ棄テヨ、ト云ケレド
モ、夫(をうと)糸惜(いとほし)ガリテ不棄(すて)ザリケルヲ、
妻(め)強(あながち)ニ責云(せめいひ)ケレバ、夫(をうと)
被責(せめら)レ侘テ…(『今昔物語』信濃国姨母棄山語第九)」。


早い話が姨母を親同様に扶養していた男が、妻に責めたてられやむ
なく姨母を山に捨てましたが、家に帰り、後悔の念にかられ連れ戻
しに行った話です。されば、新しい妻の言いなりになって、つまら
ぬ心を起こしてはならぬ。

……それ以後、その山を姨母捨山というようになった。慰めがたい
というたとえに姥捨山というのはこの故事に基づいた。この山は以
前は冠山(かんむりやま)といっていた。冠の巾子(こじ)に似て
いたからだと語り伝えているということだ。と結んでいます。

しかし、姨捨山というのは別名で、正式には冠着山(かむりきやま)
いうんだそうです。山頂広場の杉の大木のわきに冠着神社があって、
更級郡戸倉町方面を向いて建っています。また、神社裏手くぼ地に
ある石の祠は冠着山権現をまつってあるといい、東筑摩郡坂井村側
を向いています(祠はふつうまつった集落方面を向けてあります)。

冠着(かむりき)とは、頭にのせる冠を着ける意味。『古事記』に
ある「天の岩戸がくれ」の時活躍したあの天手力男命(あめのたぢ
からおのみこと)が、天の岩戸を背負ってやってきてこの山で休ん
だ時、ずれた冠を着けなおしたのが名前の由来とのこと。ここはま
た、名月の山としても有名で、『古今和歌集』などにもうたわれて
いる名所です。

▼【データ】
【山名】・冠着山(かむりきやま)・姨捨山(おばすてやま・うばす
てやま)・冠山(かぶりやま)・古名更級山・俗名チョボ山。・手力
男命がこの山で休み、冠を正したため。棄老伝説。

【所在地】
・長野県千曲市戸倉(旧埴科郡戸倉町)、同県千曲市上山田(旧更
級郡上山田町)、同県東筑摩郡筑北村(旧東筑摩郡坂井村)との境。
しなの鉄道戸倉駅の西5キロ。JR篠ノ井線冠着駅から歩いて1時
間30分で冠着山(かむりきやま・姨捨山)。三等三角点(1252.2m)
と冠着神社がある。地形図に山名冠着山(かむりき・姥捨山)と三
角点の標高と神社記号(鳥居)の記載あり。

【位置】
・三角点:(標高m、▽等三角点)。【緯度経度】北緯36度28分07.9
秒、東経138度06分23.9秒(電子国土ポータルWebシステムから
検索)

【基準点の詳細】
・基準点:(基準点コード:TR35438505801)(点名:冠着)(冠字
選点番号:在 44)(種別等級:三等三角点)(成果状態:正常)(測
地系:世界測地系)(緯度経度:緯度 36°28′07.6724、経度 138
°06′23.9634)(標高1252.20m)(現況状態:正常 20041022)(所
在地:長野県千曲市大字羽尾字冠着山3407番地)(点の記図:
閲覧可)。(国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「麻績(長野)」(国土地理院「地図閲覧サ
ービス」から検索)。5万分の1地形図「長野−坂城」

【山行】長野県修那羅山から姨捨山・霊諍山石仏めぐり山行時探訪
・第2日:1990年(平成2)4月16日(月)姨捨山探訪:1990年(平
成2)4月15日(日)〜16日(月)「上野駅・高崎駅・上田駅・修那羅
山(修那羅峠)・冠着駅・姨捨山(冠着山)・一本松峠・姥捨駅・霊
諍山・大雲寺・屋代駅・高崎駅・上野駅」

【参考文献】
・『角川日本地名大辞典20・長野県』市川健夫ほか編(角川書店)
1990年(平成2)
・『今昔物語』(巻第三十 本朝付雑事)「信濃国姨母棄山語第九」:
日本古典文学全集24『今昔物語4』馬淵和夫ほか校注・訳(小学
館)1995年(平成7)
・『信州山岳百科・1』(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
・『大和物語』(百五十六):校注古典叢書『大和物語』安倍俊子・
校注(明治書院)2001年(平成13)

山と田園の画文ライター
【ゆ-もぁ-と】・民画家・漫画
【とよた 時】

………………………………………………………………………………………………
山旅イラスト【ひとり画通信】
題名一覧へ戻る