山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼389号「那須・三斗小屋の吹雪」

【概略】
一夜明けての三斗小屋は大吹雪でした。小屋のおばさんが峰の茶屋
峠方面は危険だから通るなという。それを聞かず峠に向かった登山
者が途中で疲労死したという。わが家からさほど遠くない幼稚園の
園長さんだったとあとで知りました。
・栃木県黒磯市

▼389号「那須・三斗小屋の吹雪」

【本文】
栃木県那須の山々を訪れる人に人気がある三斗小屋温泉。標高1460
mにあるひなびた2軒だけのランプの宿です。まわりは那須郡那須
町ですがここは栃木県那須塩原市の飛び地になっています。

この温泉は、康治元年というから1142年(平安時代)、岩代国信夫
郡(いまの福島県福島市)の生島某という人が発見した温泉という
から古い。

かつて湯治客は、ここの西方の会津中街道から「三斗小屋宿」経由
で訪れていましたが、明治末期に街道が荒廃。いまは茶臼岳のふも
と那須町湯本から峰の茶屋峠を越え、2時間かけて訪れる客がほと
んどだそうです。

途中の峰の茶屋峠は名にしおう強風の名所です。西北の三斗小屋温
泉方面から吹く風は凹んだ登山道を通り道にして峰の茶屋峠に吹き
上げます。

峰の茶屋は、茶屋といってもただの掘っ建て小屋で壁も板を荒く打
ちつけてある程度(当時)。

ある年の2月、快晴の中雪を踏みながら峠を越えて三斗小屋に宿泊。
温泉にひたりゆったり一夜を過ごしました。明けて翌日の三斗小屋
は大吹雪になっていました。

朝食の時、小屋のおばさんが、外はこの吹雪。峰の茶屋峠方面は非
常に危険なので行かないで欲しい。下山するには西側を迂回して遠
回りになるけれど板室温泉に下ってくださいという。

板室温泉へは山道と林道を5時間半、歩いた歩いた。しかし、宿の
おばさんのいうことを聞かず峠に向かった登山者もいたという。

テレビのニュースで途中の峰の茶屋峠で動けなくなり板張りの小屋
で疲労死したと報道していました。その人はわが家からさほど遠く
ない幼稚園の園長さんだったとあとで知りました。

▼三斗小屋温泉【データ】
【所在地】
・栃木県黒磯市。JR東北本線黒磯駅からバス、那須岳山麓から歩
いて2時間で三斗小屋宿。地形図に地名のみ記載。

【位置】
・【三斗小屋温泉】緯度経度:北緯37度08分5.19秒、東経139度55分
33.6秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「那須岳(日光)」

【山行】
・某年2月11日(月・すごい風、吹雪)三斗小屋温泉探訪

【参考】
・「日本歴史地名大系9・栃木県の地名」寶月圭吾(平凡社)1988
年(昭和63)
・「角川日本地名大辞典9・栃木県」大野雅美ほか編(角川書店)1
984年(昭和59)
・「三斗小屋誌」:(「日本歴史地名大系9・栃木」)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

………………………………………………………………………………………………
山旅イラスト【ひとり画展通信】
題名一覧へ戻る