とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼379号 北ア・大天井岳のホコラ」

【概略】
槍穂高連峰の展望台大天井岳。その呼び方はまちまちだ。「おてん
しょう」か「大天」か、はたまた「御天上」か「御天所」か。ハイ
マツの頂上には穂高神社の分祠がある。呼び方などに関係なく登山
者は祠を前に槍ヶ岳が入るように、かわりがわりカメラにおさまる。
・長野県安曇野市と松本市との境

▼379号 北ア・大天井岳のホコラ」

【本文】
北アルプス穂高連峰の東側からの展望台になっている大天井岳(お
てんしょうだけ・標高2921.9m)。長野県中房温泉と槍ヶ岳を結ぶ
「喜作新道」はご存じのように、大天井岳を巻いて北西の肩を通っ
ているためこの山の山頂は通っていません。

また常念岳から蝶ヶ岳へ向かうコースも山頂は踏んでいません。大
天井岳山頂は山小屋の大天荘の横から北西に少し登ったところにあ
るからです。

低いハイマツの生えた頂上には祠(穂高神社の分祠)があって、そ
れを前に登山者はバックに槍ヶ岳が入るように、かわりがわりカメ
ラにおさまっています。

喜作新道とは、殺生小屋や西岳小屋のオーナー小林喜作が、1922
年(大正11)に開いた東鎌尾根の登山道のことで、槍ヶ岳を目指
す表銀座通りとも呼ばれています。

ところでこの山はなんと読むのでしょうか。ガイドブックでは「お
てんしょう」とルビをふってあります。また「おおてんじょう」と
読ませる山の本もあります。

ところが松本地方や安曇野地方では「だいてんじょう」と呼ぶ人も
いるというのです。しかも穂高町営の山小屋「大天荘」は「だいて
ん荘」だというのです。

またまた御天上、御天井(おてんしょう)などの説もあります。さ
らに明治時代の穂高周辺の名ガイドとして知られる上條嘉門次も
「二ノ俣のてんしょう」と呼んでいたといいます。

1923年(大正12)の「南安曇郡誌」(南安曇郡教育会)にはおおよ
そ次のように書かれています。「江戸時代の絵図には神明岳と書か
れているが由来などははっきりしない。その後山容が常念山脈の盟
主の貫禄を示し天井のように高い堂々たる姿から大天井の名がつい
たとされている。

明治末期から大正にかけては御天照、御天璋、御天上などの文字が
使われていた。岩波写真文庫「上高地」の中には御天上(俗称・大
天井)と記されている」。

しかもこのごろは、オテンショウがオオテンジョウになり、さらに
ダイテンジョウと転化して呼ばれている始末です。

あんなこんなで、どうやら元々は「てんしょう」にしろ「てんじょ
う」にしろ、お城の天守閣のように高くそびえているので「おてん
しゅかく」といっていたのが転化したのだろうといわれています。

ちなみに「二ノ俣のてんしょう」とは、槍沢の二ノ俣谷が突き上げ
た最高所にある天守閣ということになるわけでしょうか。

▼大天井岳【データ】
【山名】大天井岳(おてんしょうだけ)。別称・神明岳、御天照、
御天璋、御天上、おおてんじょうだけ。「「南安曇郡誌」南安曇郡教
育会1923年(大正12)」

【所在地】
・長野県安曇野市穂高(旧南安曇郡穂高町)と長野県松本市安曇(旧
南安曇郡安曇村)との境。大糸線有明駅の西16キロ。JR大糸線穂
高駅からタクシー、中房温泉から歩いて9時間30分で大天井岳。三
等三角点(2921.9m)と大天荘がある。地形図に山名と三角点の標
高と南側に大天荘、北側に切通岩の文字の記載あり。

【位置】
・三等三角点:(標高2921.9m)。【緯度経度】北緯36度21分54.04秒、
東経137度42分03.99秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【基準点の詳細】
・基準点(三角点):(基準点コード:TR35437453601)(点名:天章
山)(冠字選点番号:化 32)(種別等級:三等三角点)(成果状態
:正常)(測地系:世界測地系)(緯度経度:緯度 36°21′53.9612、
経度 137°42′04.0336)(標高:2921.91m)(現況状態:正常 199
91001)(所在地:長野県安曇野市中房国有林210林班界)(点の
記図:閲覧可)。(国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」から検
索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「槍ヶ岳(高山)」。5万分の1地形図「高
山−槍ヶ岳」

【山行】
・1995年(平成7)8月24日(木・快晴)大天井岳探訪:1995年(平
成7)8月17日(木)〜8月28日(月)「北ア・裏銀座・烏帽子岳・野
口五郎岳・水晶岳・雲ノ平・高天原(高天ヶ原)・三俣蓮華岳・双
六岳・槍ヶ岳・大天井岳・常念岳・蝶ヶ岳・大滝山・徳本峠・霞沢
岳往復・島々集落」単独行

【参考文献】
・「角川日本地名大辞典20・長野県」市川健夫ほか編(角川書店)
1990年(平成2)
・「信州山岳百科・1」(信濃毎日新聞社)1983年(昭和58)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画信】
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