山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼375 号 「北八ツ・蓼科山登山道の猫」

【概略】
蓼科山登山口のバス停を後にして山道に入り山頂を目指す。笹やぶ
道をしばらく行くとなにやら目の前を横切るものがいる。ナント子
猫だ。こんなところに捨てられたのだろうか。雪の降る冬を越せる
のだろうか。
・長野県立科町と茅野市との境

▼375 号 「北八ツ・蓼科山登山道の猫」

【本文】
八ヶ岳は連峰で、南の八ヶ岳と北八ツヶ岳に分かれ、北八ツヶ岳の
奥にぽつんと富士山のような形をした目立つ蓼科山(標高2530.3
m)があります。

こんな関係ですからこの連峰にはいろいろな伝説があります。かつ
て八ヶ岳と蓼科山は兄妹だったという。兄の八ヶ岳の北に妹の蓼科
山がそびえていました。当時このあたりには伝説の大男デエラン坊
が住んでいたという。

大男は近くで噴火している浅間山が吹き上げる大岩を見て、これを
八ヶ岳に積み上げて富士山より高くしてやろうと考えました。大男
は岩をもっこで運んで行き、八ヶ岳の上にぶちまけはじめました。

驚いたのは八ヶ岳です。頭の上に土や岩が降ってくるので頭が重く
てやりきれません。「重いよう!」泣き叫ぶ八ヶ岳。そのうるさい
こと。

「それなら軽くしてやるッ」。デエラン坊は山を八つに砕いてしま
ったのでした。それを見た妹の蓼科山が大騒ぎ。怒った大男はそれ
なら諏訪湖に放り込んでやるとばかり、蓼科山を抱きかかえ引っこ
抜こうとしました。

いくらデエラン坊でもそう簡単には引き抜けません。う〜んと踏ん
張った時、両足が地面にめり込んで大きな穴ができ、そこに水がた
まり池になったのが双子池だという話です。双子池はいまはサンシ
ョウオがゆったりと浮かんでいます。

そんな伝説のある蓼科山の登るにはビーナスラインの蓼科山登山口
からとりつきます。バス停を後にして山道に入ります。笹やぶ道を
しばらく行くと前を横切るものがいます。

ナント猫でした。こんなところに捨てられたのでしょうか。雪の降
る冬を越せるのでしょうか。心配です。

▼蓼科山子猫捨てられ場【データ】
【所在地】
・長野県茅野市。JR中央線茅野駅からバス・親湯入口から歩いて
30分で子猫捨てられ場所。地形図上には何も記載なし。

【位置】
・【蓼科山猫捨てられ場】緯度経度:北緯36度05分10.51秒、東経13
8度17分07.6秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から
検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「蓼科山(長野)」

【山行】
・某年9月10日(木・晴れ)蓼科山探訪

【参考】
・「日本伝説大系・7」長野担当・岡部由文(みずうみ書房)1982
年(昭和57)
・「日本の民話・自然の精霊」(角川書店)1974年(昭和49)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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