山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼374号 「中央線・牛奧ノ雁ヶ腹摺山の雁」

【概略】
小金沢連嶺の地図を見ると、やたらに「雁が腹を摺る」山が目につ
く。「雁ヶ腹摺」山はほかに笹子雁ヶ腹摺山、牛奥ノ雁ヶ腹摺山と
計3つもあります。ことしは丑年。「オイ、ウシ年だぜ。」毎年通り
道をどこにしようか迷うガンもことしは牛奥の山に方向を決めるに
違いない。
・山梨県甲州市と大月市の境

▼374号 「中央線・牛奧ノ雁ヶ腹摺山の雁」

【本文】
中里介山の小説で有名な「大菩薩峠」は山梨県の大菩薩嶺(だいぼ
さつれい)という山の肩にある峠。そこから南にのびる長大な尾根
小金沢連嶺(れんれい)は、小金沢山、黒岳などを通り、南端の滝
子山まで続いています。

地図を見ると、なんとか腹摺山、かんとか腹摺山といった、やたら
に「腹を摺る」山が目につきます。

これらの山ある位置は、名前の通りガン(雁)などの渡り鳥が飛ぶ
コースにあたっていて、春や秋など移動の季節にはふもとの村から
見ると、鳥が山に腹を摺って飛んでいくように見えるといいます。

そこでついた名前が雁ヶ腹摺山。小金沢連嶺からちょっと東にはず
れたところにある雁ヶ腹摺山は、旧五百円札の富士山をこの山から
撮影したことは有名です。

しかしもうひとつ、牛奥ノ雁ヶ腹摺山(うしおくのがんがはらすり
やま)の名は、甲州市塩山牛奥の地区名から来ているという。この
地区は大きな牛の放牧場があり、その名も牛を奥(置く)という意
味なのだそうです。

牛奥地区は上日川ダムからつづく日川沿いにあり、近くに嵯峨塩鉱
泉という温泉地もあります。

付近には牛奥ノ雁ヶ腹摺山のほか、雁ヶ腹摺山・笹子雁ヶ腹摺山と
計3つも「腹摺山」があり、毎年どの山を通ろうかとガンも迷う道?
「オイ、ウシ年(1997年)だ。ことしは牛奥の山に決めようぜ」と、
いっているようです。

▼牛奥ノ雁ヶ腹摺山【データ】
【所在地】
・山梨県甲州市塩山(旧同県塩山市)と大月市との境。JR中央線
塩山駅からバス、大菩薩峠登山口から歩いて5時間30分で牛奥ノ
雁ヶ腹摺山。付近に何もなし。地形図上には山名のみ記載。標高な
し。付近に何も記載なし。標高約1990m

【位置】
・【牛奥ノ雁ヶ腹摺山】北緯35度42分21.38秒、東経138度51分
24.07秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「大菩薩峠(甲府)」

【山行】
・某年10月26日(土・朝のうち晴後くもり)雁ヶ腹摺山探訪

【参考】
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

………………………………………………………………………………………………
山旅イラスト【ひとり画展通信】
題名一覧へ戻る