山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼354号「北ア・霞沢岳の展望とK1ピーク」

【概略】
上高地のそばにありながら目立たない霞沢岳。その途中で絶好の穂
高の展望が得られるK1ピーク。ある夏、徳本峠にテントを張りっ
ぱなしにして楽しみに登ってきたのにガスで真っ白け。期待してい
た景色はどこへやら、もう一度出直してこいとのお告げだった。
・長野県松本市

▼354号「北ア・霞沢岳の展望とK1ピーク」

【本文】
山の観光地として知られる上高地。ここに降り立った観光客は穂高
の山々に見とれ歓声をあげます。しかし木々のこずえ越しに望む霞
沢岳には目がいきません。

この山を望むにふさわしい場所はウェストン広場の梓川が大きく曲
がるあたり。山の高さ、姿、また山頂からの穂高連峰の眺めからい
っても霞沢岳は名山だという。

深田久弥も「日本百名山」のあとがきで、その選に入れたかった山
のひとつとしてこの山をあげています。

かつての登山路は帝国ホテル前から山頂に突き上げている八右衛門
沢を登り詰めるコースだったという。

山の詩人尾崎喜八が「三本槍のピナクルが……」とうたったという、
山頂にある猫の爪形の三本槍の奇岩峰。

また穂高の展望絶好のK1ピーク。山名はこの山の東側を源流とす
る霞沢からきたという。

ある年、10日間の縦走の「ついでに」と、徳本峠にテントを張りっ
ぱなしにして霞沢岳に登ってみました。ジャンクションピークを過
ぎるとピンクのハクサンフウロ、キヌガサソウの白い花が目につき
ます。

山頂に着けば焼岳が眼前にせまっていると案内書にあります。しか
しK1ピーク、K2ピークを過ぎるとだんだん霧が濃くなってくる
ではありませんか。

山頂近くの岩稜地帯になると期待していた景色はどこへやら、ガス
で真っ白け。もう一度出直してこいとのお告げでした。スミマセン。

▼K1ピーク【データ】
【所在地】
・長野県松本市安曇(旧南安曇郡安曇村)。JR篠ノ井線松本駅か
ら松本電鉄新島々駅からバス上高地終点歩いて徳本峠経由7時間
10分でK1ピーク。付近に何もなし。地形図上には何も記載なし。

【位置】
・【K1ピーク】緯度経度:北緯36度13分33.6秒、東経137度38
分40.6秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「上高地(高山)」。5万分の1地形図「高
山−上高地」

【山行】北アルプス常念岳・蝶ヶ岳・徳本峠縦走
・某年8月27日(日・晴れ)霞沢岳探訪

【参考】
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
・「信州山岳百科・1」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・「信州百名山」清水栄一(桐原書店)1990年(平成2)
・「日本三百名山」毎日新聞社編(毎日新聞社)1997年(平成9)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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