山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼345号「北ア・高天ヶ原竜晶池ニッコウキスゲ」

【概略】
高天原温泉は標高2200m。さらに奥に誰が名づけたか、夢の平とい
う別天地がある。東側に見上げる水晶岳から赤牛への稜線。俗世と
かけ離れた静かな時間が流れる。そんななかで池のほとりのニッコ
ウキスゲにとまったオニヤンマの目が動き、横目になってジッとこ
ちらを見ていた。
・富山県大山町

▼345号「北ア・高天ヶ原竜晶池ニッコウキスゲ」

北アルプス最奥にある富山県の雲ノ平は標高2500〜2700m。黒部川
源流の台地です。別名岩苔平。面積25万平方mもの広大な平坦地。

ギリシャ庭園やスイス庭園などと呼ばれる湿原が続く高山植物の宝
庫で、とくに女性に人気があり、シーズンはにぎわいます。

雲ノ平の名は信州側でつけたものという。越中側では大中原(おお
なかはら)と呼んでいたといいます。

江戸時代後期、享和3(1803)年の古地図にその名が記載されてい
るという。大中原は祖父岳の異名中山と関連しているという。

その雲ノ平から温泉が流れる沢のある高天原は北側直下にありま
す。高天原温泉は標高2200mで日本第3位の高さという(「山DA
S」石井光三氏による)。

そこからさらに奥に誰が名づけたか、「夢の平」という別天地があ
ります。奥へ続いているわずかな踏みあとを膝ほどの草をかき分け
進むと開けた湿原の竜晶池に出ました。

池のほとりからは西に薬師岳が望めます。東側に見上げると水晶岳
から赤牛への稜線が続いています。池のほとりにニッコウキスゲが
咲いています。

その花にとまったオニヤンマの目が動き、横目になってジッとこち
らを見ています。動くものといえば空の雲とトンボの目だけ。俗世
とかけ離れた静かな時間が流れていました。

▼【データ】
【山名・地名】
・【異名、由来】:竜晶池・夢ノ平

【所在地】
・富山県富山市(旧上新川郡大山町)。富山地方鉄道有峰口駅から
バス折立終点下車、歩いて15時間30分で竜晶池。地形図に池の名
と夢ノ平の文字の記載あり。北西そばに標高点(2064m)がある。
竜昌池より南方向364mに高天原温泉がある。付近に何も記載なし。

【位置】
・【竜晶池】緯度経度:北緯36度26分54.23秒、東経137度34分
58.99秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「薬師岳(高山)」(国土地理院「地図閲覧
サービス」から検索)

【山行】北アルプス裏銀座から表銀座・常念岳・徳本峠縦走
・某年8月21日(日・ガスのち晴)探訪

【参考】
・「黒部の山賊・北アルプスの怪」伊藤正一(実業之日本社)1995
年(平成7)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
・「日本歴史地名大系16・富山県の地名」(平凡社)1994年(平成
6)
・「山DAS」石井光三(白山書房)1997年(平成9)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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