とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼325号 「北ア・黒部五郎岳のライチョウ」

【概略】
小屋前のテントを張り、黒部五郎岳を往復。チングルマの毛がなび
く登山道は快適だ。一本道の登山道の真ん中ライチョウがいて動か
ない。歩くのをためらう登山者。うしろから続く人たちが次々につ
かえて一列にならびはじめた。そろそろどいてくれないか。
・富山県大山町と岐阜県高山市の境

▼325号 「北ア・黒部五郎岳のライチョウ」

【本文】
北アルプス雲ノ平から黒部川源流の谷を隔てた対岸に黒部五郎岳
(標高2839.6m)という山があります。この山も裏銀座通りにある
野口五郎岳(標高2924.3m)と同じように、ゴウロからきた山名だ
そうです。

「五郎」は古語のゴウロで、ごうら・ごろちなどと同義語の「岩石
を敷き詰めたような地形」をさすという。

南麓の飛騨側では中ノ俣川の源頭にあるというので、かつては中ノ
俣岳と呼んでいました。山頂には手取層群の礫岩があり、東側は氷
河期につくられた日本の代表的カールになっています。

このあたりは加賀藩のお縮山(ちぢみやま)というものだったそう
で入山は禁止され、江戸時代初期の寛永17(1640)年くらいから明
治3(1870)年まで毎年検分のための登山が続けられてきたといい
ます。

ある年の8月、黒部五郎小屋キャンプ場にテントを張り文字通りゴ
ロゴロした岩に足を取られながら山頂を往復しました。残雪のカー
ルで一休み。手に取った雪を固めて遊び、こどものころに帰ります。
翌日は三俣蓮華岳(標高2841.2m)へ向かいます。好天気になか、

高山植物のチングルマの毛がなびく登山道は快適です。先方に立ち
止まっている人がいます。見ると一本道の登山道の真ん中ライチョ
ウがいて動きません。

歩くのをためらう登山者。うしろから続く人たちが次々につかえて
一列にならびはじめるような状態になりました。オイオイ、ライチ
ョウくん。そろそろどいてくれないか。

▼【データ】
・【異名、由来】:くろべごろうだけ。黒部にあるゴロゴロした岩の
ある山。鍋岳。岐阜県側では中ノ俣岳。

【所在地】
・富山県富山市旧大山町各地区名(旧上新川郡大山町)と岐阜県高
山市上宝町(旧同県吉城郡上宝村)との境 富山地方鉄道有峰口か
らバス、折立から歩いてのべ11時間で黒部五郎岳。三等三角点(標
高2839.6m)がある。地形図に黒部五郎岳(中ノ俣岳)の文字と三
角点の標高のみ記載。

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(選定):日本二百名山、日本三百名
山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(×選定外)
・田中澄江選定(1981年)「花の百名山」(選定・チングルマ)

【位置】
・三角点:(標高2839.6m、三等三角点)。【緯度経度】北緯36度23
分33.32秒、東経137度32分23.71秒(電子国土ポータルWebシステム
から検索)

【基準点の詳細】
・基準点(三角点):(基準点コード:TR35437446301)(点名:黒部)
(冠字選点番号:坐 30)(種別等級:三等三角点)(成果状態:
正常)(測地系:世界測地系)(緯度経度:緯度 36°23′33.1821、
経度 137°32′23.7999)(標高:2839.58m)(現況状態:報告なし
00000000)(所在地:記入なし)(点の記図:閲覧不可)。(国土地
理院「基準点成果等閲覧サービス」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「三俣蓮華岳(高山)」。5万分の1地形図
「高山−槍ヶ岳」

【山行】
・第5日:1994年(平成6)8月9日(火・快晴)黒部五郎岳探訪:
1994年(平成6)8月6日(土)〜15日(月)「東京駅・岐阜駅・高山駅
・新穂高温泉・笠ヶ岳・双六岳・黒部五郎岳・三俣蓮華岳・鷲羽岳
・水晶岳・黒部源流・新穂高温泉・ロープウエイ・西穂山荘・高山
駅・岐阜駅・東京駅」家内と同行

【参考文献】
・『角川日本地名大辞典16・富山県』坂井誠一ほか編(角川書店)1
979年(昭和54)
・『角川日本地名大辞典21・岐阜県』野村忠夫ほか編(角川書店)1
980年(昭和55)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「旅と伝説』三元社(1942年(昭和17)1月号)
・『富山県山名録』橋本廣ほか(桂書房)2001年(平成13)
・『日本歴史地名大系16・富山県の地名』(平凡社)1994年(平成6)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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